「米国初のベーシックインカム」超予想外の成果 もし24ヶ月間500ドル支給されたら何をする?

拡大
縮小

受給者のうち借金を清算した割合は2019年2月時点の52%から1年後には62%に増加。不意の出費を貯金でまかなえる割合も2019年2月時点の25%から1年後には52%に増加した。一定の収入が毎月得られることで、受給者の経済状況がより安定したことがうかがえる。

受給者は、抑うつや不安が少なくなり、健康状態も向上した。受給者のケスラーの心理的苦痛測定指標(K-10)の平均値は、実験開始当初の「軽度のメンタルヘルス障害」から1年後には「精神的に健康」へと改善している。

タバコや酒類の購入に使われた割合は1%未満だった

この実験では、毎月、デビットカードを通じて500ドルを支給し、その使途を追跡した。食費に充てる割合が最も多く、約4割を占めたほか、日用品や衣料品の購入、光熱費、交通費に使われていた。また、タバコや酒類の購入に使われた割合は1%未満であった。

この社会実験を推進したマイケル・タブス前市長は2020年の市長選で敗北したものの、米国では、ユニバーサルベーシックインカム(UBI:基礎所得保障)の概念を推進する動きが活発になっている。コロナ禍の2020年6月には、ユニバーサルベーシックインカムを推進する米国の市長が「所得保障制度のための市長連合(MGI)」を結成し、約40の市が参加。

また、2020年アメリカ大統領選に民主党から出馬したアンドリュー・ヤン氏は、最大規模のベーシックインカムの導入を政策に掲げ、2021年6月のニューヨーク市長選への出馬を表明している。

Universal Basic Income experiment shows signs of success in Stockton, California (動画:YouTubeより)
「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

世界のニュースを独自の切り口で伝える週刊誌『ニューズウィーク日本版』は毎週火曜日発売、そのオフィシャルサイトである「ニューズウィーク日本版サイト」は毎日、国際ニュースとビジネス・カルチャー情報を発信している。CCCメディアハウスが運営。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT