「上場企業財務力ランキング」最新トップ300社 1位になったのは「スイッチ」が好調の任天堂

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最後に過去14回のランキングトップの現状をご紹介する。第1、2回トップの武田薬品工業は6位。第3~5回の3年連続トップ任天堂はしばらく低迷していたが、今年はついに首位復帰。任天堂を上回る4年連続トップ(第6~9回)だった国際石油開発帝石は14位(3625点)、第10、11回トップのSUBARU(旧富士重工業)は58位(3514点)、第12、13回トップのZホールディングス(旧ヤフー)は19位(3597点)と過去のトップ企業はいずれも上位に残っている。

この財務評価は、標準的な財務指標を複数使い総合的に評価している。自社の数値だけでなく他社の影響も受け、バランスよく指標の高い会社が有利となりやすい。たとえば、近年、上場企業は有利子負債を減らす傾向にあり少ないほうが一般的になっているため、平均より多く借入金がある会社は低めの評価になることが多い。このように「多数派が正しい」という個性派があまり評価されないモデルであるとも言える。

さて、すでに2021年3月期は第3四半期の発表は終了したが、新型コロナウイルスの影響で上場企業の業績は2極化が進んでいる。一部企業の業績悪化が広く報道されているが、総合評価を行うことでそれ以外の企業の強みや弱みがわかることもある。次回の財務評価は今後の大きな流れを知るための貴重な情報になるかもしれない。

●第15回東洋経済・上場企業財務評価(東洋経済財務力ランキング)について
東洋経済新報社「財務・企業評価チーム」が作成。アドバイザーは明治大学大学院商学研究科の山本昌弘教授。東洋経済が保有する財務データを使い、多変量解析の主成分分析手法で成長性、収益性、安全性、規模の4つの分野で評価した。
対象会社は原則として2020年9月1日時点に上場している一般事業会社で、銀行、証券・先物、保険、その他金融を除き、各新興市場を含む。決算期は2020年3月期までが対象。財務データは上場後の決算で直近3期平均(最低1期は必要)を使用。指標データなどで分母がマイナスになり計算ができない場合、その期は「計算不能」となる。
決算ベースについては、各期とも連結優先。ただし、連結開始や廃止などで連結と単独が混在する場合もある。また、変則決算がある場合は6カ月以上の決算期のみ使用。売上高、営業利益、経常利益、当期純利益などのフロー項目は12カ月に調整した。
分析手法として使ったのは多変量解析の主成分分析。この手法は多数の変数を要約し、少数の情報で全体の特性を代表させることができる。財務データのような多数存在する項目を少ない情報に集約でき、総合評価が可能になる。
主成分分析で求められた第1主成分得点を偏差値化し、異常値をならすために最大70、最小30に変換。さらに最高1000、最低500に調整して各分野の得点とした。4つの評価分野の各得点を合計したものが総合得点となっている(総合得点の最高は4000点)。
■ランキング算出に使用した財務指標
【成長性】売上高増減率、営業利益増減率、営業キャッシュフロー増減率、総資産増減率、利益剰余金増減率
【収益性】ROE(当期純利益÷自己資本)、ROA(営業利益÷総資産) 、売上高営業利益率(営業利益÷売上高)、売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)、営業キャッシュフロー
【安全性】流動比率(流動資産÷流動負債)、D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)、固定比率(固定資産÷自己資本)、総資産利益剰余金比率(利益剰余金÷総資産)、利益剰余金
【規模】売上高 、EBITDA(税引き前利益+支払利息+減価償却費)、当期純利益、総資産、有利子負債
注)EBITDAの支払利息と減価償却費はキャッシュフロー計算書掲載の数字を使用
岸本 吉浩 東洋経済 記者

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きしもと よしひろ / Yoshihiro Kishimoto

1996年東洋経済新報社入社。以来各種企業調査にかかわる。『CSR企業総覧』編集長として、CSR調査、各種企業評価を長年担当。著書に『指標とランキングでわかる! 本当のホワイト企業の見つけ方』など。2023年4月から編集局記者、編集委員、『本当に強い大学』2023年版編集長。

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