オードリー・タン、日本の高校生と議論の裏側 九州トップ7校が集結、初のシンポジウム開催
そのうえで、越猪校長は「オードリー・タンさんこそ、STEAM教育を体現した最高の人だから」と説明。つまり科学、技術、工学、数学に加え、アートの思考を持つ人はオードリー氏のような人だと評価する。
だからこそ、世界的なプログラマーであり、詩作にも情熱を注ぎ、よりよい社会の構築のために穏やかに行動しながら、現実にあるさまざまな境界を越え続けるオードリー氏と、九州の高校生が話をしているところを見てみたいと思ったと打ち明ける。
宮崎西高校の川越淳一校長も、オードリー氏を「本当の知性、真の知性を持つ人だ」と絶賛する。「経歴のすごさに加え、どんな質問にも高校生に向かってわかるように、時には適切な比喩を交えながら親身になって話をしてくれた」と評価する。
対話を通して、高校生たちは充実した経験を得たようだ。「大臣であり、コロナ禍から台湾を守った英雄と話をするという貴重な体験ができたことは大きな自信となった。オンラインでの準備過程も、イベントに参加しなければ体験できなかったこと」(鶴丸高校1年、千代丸佳依さん)、「自分の視野の狭さを実感した。オードリーさんのように世界を広く見られるようにこれからの生活で意識したい」(熊本高校2年、西村沙耶さん)、「オードリーさんとの対話だけでなく、オンラインでの話し合いの進め方や難しさ、話し合いの折り合いの付け方など、社会に出てからも大切な貴重な経験を得た」(熊本高校2年、山本優果さん)。
オードリー・タン氏もシンポジウム終了後、「九州の高校生も台湾の若者と同じような問題、例えば包容的な社会をどうつくり上げるか、持続可能なイノベーションをどう行えばいいのかといった社会問題に強い関心があることがわかった」と述べた。また、「今回のシンポジウムの運営は、対話中の音声や映像などとてもよく、ハイレベルなオンライン会議がスムーズに行えた。今後、九州の高校生と対話をしたのと同じような形で、世界の若者と話を続けていきたい」と評価した。
新たな技術を使い、それを生かすためには一つひとつ経験を積み重ねるしかない。それには、ネット回線やハードウェアなどのインフラをきちんとそろえ、使いこなすことができるような経験を持つ人材が何よりも必要だということが、今回のシンポジウムで改めてわかった。また、今回の参加校は各県を代表する進学校だが、進学校だからここまでできたのでは決してない。インフラとノウハウさえあれば、どんな学校でも実現可能なはずだ。そうであってこそ、今回のように生徒たちにとって最高の学習の機会を提供でき、生徒たちがすばらしい経験を得ることができるのだ。
後編「超天才「台湾IT大臣」高校生の疑問にどう回答?」で、対話の内容を読む
(注記のない写真はすべて「世界的なデジタル社会でどう生きていくか、高校生が何をすべきか」より)
執筆:福田恵介 協力:安蒜美保制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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