オードリー・タン、日本の高校生と議論の裏側 九州トップ7校が集結、初のシンポジウム開催

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7校が安定した回線上で話し合いができるようになっても試行錯誤が続いた。「ホスト役の熊本高校側が方針や流れを詳しく決めすぎると、参加者の意見が反映されづらくなり、各校の参加者は納得しない。かといって、すべて参加者の意見で方針を決めるとなると、オンラインで顔が見えていても、直接対面しているときよりも誤解が生じやすい。これに接続問題が加わると、話し合いが進まなくなった」(熊本高校2年、尾上結美さん)。

Web上では、全国の高校生から募った質問もオードリー氏にぶつけた

シンポジウムという限られた時間の中で多くのことを聞きたいために、質問内容がかぶらないように調整も繰り返した。「ほかの人と同じではない、自分だからできる質問を考えるのが大変だった。逆に、私が思いつかないような質問や意見を持った他校の生徒の考えを聞けたことは楽しかった」(長崎西高校2年、大久保こゆきさん)。オードリー氏とのコミュニケーションには通訳者を介すものの、日本語として簡潔かつ的確な質問を作成することに、高校生たちは随分と苦労したようだ。

現在では、開始直前に出席者が集まればすぐに始められるように準備をしてくれる「ネット会議」の専門業者が存在する。ただし、今回はすべて教員と生徒でやってみるという経験が必要だと越猪校長が考え、業者に頼ることなく、すべて高校側が準備した。それは、「高校生、あるいは教員にとってICT分野で新しいことにチャレンジすることは貴重。だから複数校がオンラインで同時に参加するようなイベントのためのノウハウを得るため、ひいては公立高校のICT環境の実状と整備といったことを考え、実行する経験を積むことが大事だと考えた」(越猪校長)ためだ。問題があってもそれは経験だと、生じる問題をねばり強く、一つひとつ潰していった。

そして「ネットリテラシーを含めた今回のノウハウを全国の高校にフィードバックしてお返しをしたい」(越猪校長)と、シンポジウムの様子は全国で視聴できるように動画配信サイトで同時中継を行った。当日は視聴を希望する全国250校が、オードリー氏と九州の高校生の対話を視聴している。

自分たちの高校を紹介するスライドも、各々参加高校生が作成した

コロナ禍でリモートワークが本格化した。リモートワークはコロナ禍の前から導入がうたわれていたものの、結局、コロナ禍という非常事態になって本格的に導入が進んだのが実状だ。導入のためのノウハウも、当初は試行錯誤の連続だった企業や団体が多かった。学校教育でも、遠隔教育・授業が行える学校とそうでない学校の格差が露呈している。ICTを教育に利用するノウハウは広く共有されるべきだ。今回、九州の高校が得たノウハウもその1つになるだろう。

それぞれの気づきを得られた「オードリー氏との対話」

それでは、なぜ対話の相手がオードリー氏だったのか。もともと熊本県の高校は、台湾の高校との交流があった。また20年4月には、熊本の高校生が台湾の大学での学びを保障する連携協定を、熊本県公立高等学校校長会と国立高雄大学など8大学が結んだところだった。

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