オードリー・タン、日本の高校生と議論の裏側 九州トップ7校が集結、初のシンポジウム開催

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今や日本でも知名度の高い、台湾のデジタル大臣・唐鳳(オードリー・タン)氏。デジタル社会の最先端で生きる専門家と日本の高校生による対話が、2020年11月16日、オンラインで行われた。「世界的なデジタル社会でどう生きていくか、高校生が何をすべきか」をテーマに熊本県立熊本高等学校と一般社団法人台湾留学サポートセンターが主催。九州7県のトップ県立高校7校の高校生がオンラインでつながり、オードリー氏と対話した。デジタル社会で感じた疑問や考えを問う高校生に対し、真摯に答えるオードリー氏。対話はデジタル社会のあり方にとどまらず、これからの生き方や人生の指針にまで広がった。いかにして、このシンポジウムは実現したのか、その裏側に迫る。

ICTが可能にした「台湾デジタル大臣」との学び

ポンッとディスプレーに出てきた瞬間、生徒たちからどよめきが起こった。台湾のデジタル大臣・唐鳳(オードリー・タン)氏が、九州の高校生と対話するためにオンラインでつながった瞬間だ。

各高校にとっては国際的なオンラインシンポジウムを開催するのは初の試みといっても過言ではない。

参加したのは、主催校の熊本県立熊本高等学校に加え福岡県立東筑高等学校、佐賀県立佐賀西高等学校、長崎県立長崎西高等学校、宮崎県立宮崎西高等学校、大分県立大分上野丘高等学校、鹿児島県立鶴丸高等学校。各校の1~2年生からそれぞれ数名が参加し、オードリー氏に質問を投げかける形式で行われた。

今回のシンポジウムは、もともと参加校の教員を中心とした勉強会が土台としてあった。毎年1、2回集まっての勉強会だったが、20年はコロナ禍で移動・集まることが困難になった。熊本高校の越猪(おおい)浩樹校長は、「教員だけでなく生徒との交流にもこの勉強会を使えないかと考えていたところに、コロナ禍でICTによる教育への関心が高まった。それなら、生徒たちとICTで何かできないかと考え、コロナ対策で有名になった台湾デジタル大臣のオードリー・タンさんと話し合うというアイデアが浮かんだ」と打ち明ける。

熊本県立熊本高等学校 越猪(おおい)浩樹校長
(撮影:福田恵介)

越猪校長が中心となって各参加高校に呼びかけ、開催を決定。しかし、そこからが大変だった。11月の開催までに、オンライン上の予行練習だけでも9回実施。そのたびに問題が生じていたのが実状だと、越猪校長は打ち明ける。最大のネックは、ネット回線の安定性だった。

チャレンジしたことで見えてきた「課題」と「希望」

それぞれの学校が持つパソコンなどのハードウェアの差もあり、7校をネットでつなげることから腐心しなければならなかった。どこかがつながれば、どこかの高校の回線が切れる。雨が降ると無線ネットワークが不安定化するという声も上がり、ポケットWi-Fiなどの接続機器を融通し合うこともあった。最終段階には万全を期すため、ホストの熊本高校に有線のネット回線を導入して回線の安定化に努め、当日に備えた。

また、オンラインで向き合うならカメラの位置はどうしたらいいか、部屋の明るさはどうか、自分たちが座る背景をどうしたらいいか……と、改善点が見つかった。照明などの備品を購入したり、カメラを買い替えたり、背景も高校生が自作したりと、企業のテレワーク普及時に発生したような問題も一つひとつ解決していった。

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