景気が今より回復しても株価上昇は微妙な理由 コロナ禍が薄れたあとの日経平均はどうなる?

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製造業の生産活動はなぜ堅調なのだろうか。ひとつは旅行、外食、エンターテインメントといった対面型サービス消費の代替需要があるだろう。世界的に国境をまたぐ移動に制限がかかる下で交通費が減少。人が密集するイベントは激減し、外食も制限がかかっている。人々は本来そうした“コト”に使うはずだったお金をIT製品(スマホ、PC、タブレット)、自動車、家電に振り分けていると思われる。

例えば、アメリカの消費統計をみると、コロナ禍が発生する直前である2月との比較でサービス消費がマイナス6.3%と減少している反面、非耐久財はプラス3.7%、耐久消費財はプラス10.5%と大幅に増加し、消費全体はマイナス2.0%まで戻している。日本では家電量販店売上高が堅調に推移しているほか、10月の自動車販売台数は2018年10月と同程度まで回復した(2019年は消費増税につき比較困難)。

緊急事態宣言は不良在庫の抑制に寄与

もうひとつの要因として不良在庫の少なさがある。通常の景気後退局面では景気減速が短期かつ浅めに終了するとの希望的観測や生産計画練り直しのコストが大きいことなどから、需要減少に対して生産調整が追いつかず、結果的に在庫水準は上昇する傾向にある。

それに対して今回は緊急事態宣言に伴って生産活動停止を余儀なくされたことで、その間の生産が激減した。こうした急ブレーキが不良在庫の抑制に寄与した模様である。日本の鉱工業生産統計で在庫の水準を確認するとリーマンショック時のような増加は観察されておらず、過去数カ月は低下傾向にあり、また出荷と在庫の前年比伸び率の差分をとった出荷・在庫バランスは基調的に改善方向(出荷>在庫)にある。

通常の景気後退局面では、不良在庫の処分に時間を要すことで生産の回復が遅れる傾向にあるが、今回は需要回復が生産増加に結び付きやすい状況にあると言える。こうした不良在庫の少なさは、アメリカや中国もおおむね似た構図だ。製造業PMIで新規受注と在庫のバランスをチェックすると、「新規受注>在庫」の構図が鮮明となっている。そうした在庫の軽さを背景に、将来見通し(指数)も問う項目の多くが良好な水準にある。

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