コロナで観光業崩壊「ニューヨーク」の悲惨な今 観光業が主力産業になっていた都市の現状は
11月16日、月曜日。マンハッタンを周遊する2階建て観光バスの乗客は10人にも届いていなかった。自由の女神像のあるリバティ島に行く大きなフェリーのデッキ下座席もほぼ空席。ニューヨーク市内にある大規模ホテルにも、ほとんど宿泊客がいない。客の消えたホテルには、新型コロナウイルスの感染防止策としてシェルターを追い出されたホームレスを収容しているところもある。
ニューヨーク市は世界でも最も人気のある観光地の1つだが、コロナ禍で観光業は底が抜けたように落ち込んだ。最新の予測によると、観光客の数は最低でも4年は元に戻らないという。ニューヨーク復活に向けた大きな課題の1つに、厳しい見通しが突きつけられた格好だ。
ニューヨークでは近年、観光業の成長が経済の重要な柱となっていた。観光はホテルからレストラン、ブロードウェーの劇場街に至るまで、さまざまな関連産業で何十万人という雇用を支えていた。
ニューヨーク市の観光プロモーションを手がけるNYC&カンパニー(ニューヨーク市観光局)が16日に公表した予測によれば、ニューヨークを訪れる旅行者は2019年に6660万人と過去最多を更新。従前の予測では今年はそれを上回る伸びになるとみられていたが、今では2019年の3分の1程度にとどまる可能性が濃厚となっている。
失業率は全国平均の2倍に
ニューヨークがアメリカの他の主要都市と比べて経済的に大きな打撃を受けているのは、主に観光業が崩壊したためだ。旅行客に売り上げを依存していた多くのレストランが完全に店じまいし、大規模ホテルにも撤退したところがいくつかある。観光業は3月にロックダウン(都市封鎖)が実施されるまで、ニューヨークに40万人の雇用と460億ドルの年間消費をもたらしていた。
あれから7カ月がたった10月末時点で、130万人を超える住民が失業手当を受けている。ニューヨーク市の失業率は14.1%と、全国の2倍を上回る。
新型コロナの感染が再拡大したことで、旅行客が戻る可能性は一段と遠のいた。ニューヨーク市内の新規感染者数は、春以降初めて1000人を突破した。