三菱電機のパワー半導体が急伸、武器は日本の“職人技”《中国を攻める》
06年1月、三菱電機は民生用パワー半導体の後工程を、国内生産から中国での委託生産に切り替えた。ただし当時は日本メーカーが主要顧客で、中国生産の狙いは現地市場ではなくコスト削減だった。
中国のエアコン需要は年間約2300万台あるが08年のインバーター化率は3%程度で、パワー半導体の需要もほとんどなかった。それでも例外的にインバーター化に熱心な中堅メーカーへ売り込むため、中国の大学と技術セミナーを開催したり、国内研修を通じた中国人のサポートエンジニアの養成を行うなど、地道な取り組みを続けてきた。
パワー半導体需要に火が付いたのは08年後半のこと。CO2削減や電力需要抑制の必要性から中国政府は09年3月以降の発売品からエネルギー効率制限値・等級表示を義務化。上海市ではインバーターエアコンに対する補助金も開始された。「10年はインバーターエアコン比率が20%を越える勢いだ」(パワーデバイス製作所の井上広志営業部長)。
三菱電機は入力回路や保護回路などを内蔵したインテリジェントパワーモジュールを投入。インバーターの製造ノウハウに乏しくても使いこなせる点などが評価され、今や中国の大手エアコンメーカーのほとんどに採用されるようになった。
技術流出を防ぎつつ 中国事業の拡大目指す
当面の課題は、増加する一途の需要と厳しい価格要求に応えられる供給体制を整備すること。そのうえで各家電メーカーの機種ごとに微妙に違う仕様を少しずつ共通化していくことを目指している。
エアコンの先には冷蔵庫、洗濯機など他の家電製品のインバーター化も視野に入る。電力系統向けや鉄道用などの大容量、電気自動車や太陽電池などの中容量なども含めれば、中国におけるビジネスチャンスはまだまだ広がっていく。