アラスカのクルマ旅で見つけた「衝撃のホテル」 広大な自然の中にそれはあった

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その一方で「アラスカの野生動物を見たい」という気持ちも強かった。野生動物との遭遇は、この種の「旅の醍醐味」でもあるからだ。オーストラリアでは、ラリー中、カンガルーにぶつかっているし、北欧では大角鹿を危うく轢きそうになったこともある。大型の野生動物はこちらのダメージも大きいし、怖い。

幸か不幸か、あるいは残念ながら、、野生動物にはほとんど出会わなかった。大ものは野生の馬(野生化した馬?)くらいだった。

ホテルは予約など一切ない。まあ、予約しようもないような場所を走ったのだから、当然なのだが、、ひとつ、面白い経験をした。アラスカとカナダの国境地帯、、アメリカ側かカナダ側かは忘れたが、国境(boundary) 直近で泊まったホテルがすごかった。

すごいホテルと言えば、贅沢なホテルを連想するかもしれないが、その真逆。世界中を旅してきて、後にも先にも出会ったことがないホテルに泊まった。そこには、アメリカの片田舎で出会うような小さなドライブインがあり、食事をした。それ自体はなにも特記することはない。

物置小屋のようなホテルで熟睡

すごかったのは、そのドライブインの前にあった3軒の板張りの小屋。2軒は6畳くらいで、1軒は15畳くらいの大きさだった。白ペンキで塗ってはあったが、僕は物置小屋だと。ところが、これが、このエリア唯一のホテル。ドライブインで、「近くにホテルは?」と訊ねた答えがこの物置小屋だった。

次のホテルまでは「かなり遠いよ」とのことだったので泊まることに。宿泊費は$9.99だったように記憶している。安いのはいいが、扉を開けて驚いた。みすぼらしいだけでなく不潔。前の客が出た後、ベッドの形を整え、ゴミを捨てただけ、、そんな感じだった。

僕は靴だけは脱いだが、あとは着たまま寝た。布団も腰の下辺りまでしか掛けなかった。でも、旅の疲れからか、すぐ熟睡したようだ。

アラスカ・ハイウェイの旅では、とくに困難にも危険にも出会わなかった。毎日美しい自然を見ながら走るだけだった。ハイウェイ沿いの自然は美しかったが、たまに出会う町は小さく、廃墟に近い町、廃墟になった町、、胸打つ光景にも多く出会った。

カナダのホワイトホース辺りまでで旅の目的はほぼ終わった。そこから先、LAまでは、ただ淡々と走るだけ。そこでいちばんきつかったのは「退屈さとの戦い」だった。

あれから40年ほど経ったが、最近のアラスカ・ハイウェイは、多くの客を吸い寄せる観光地になっているとの話も聞く。$9.99のあのホテルはどうなっているのだろうか。かなり気になる、、。

(文:岡崎宏司/自動車ジャーナリスト)

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