これがゼンショー流の成り上がり術だ ゼンショー・小川社長が語る経営哲学(2)

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2つ目の事務所が東神奈川だったんですけれども、20坪の地図の昭文社の倉庫だった。そこを事務所に借りて、本部だといってやっていたんです。創業2年後からそこに2年くらいいました。カワムラがスーパーバイザーになってからです。そのときは、事務員が1人いて、本部は俺ともう1人くらいで4人くらいだったんだけれども、毎日夕方4時くらいになると、通りで武闘訓練をやるんです。

そのときは六尺棒を持って、ターッ、ターッとやるわけ。そして、僕が駒場で買ったボクシンググローブ、パンチを受けるミットがある。安い掛け時計が一つ事務所にあったんですが、それを外して、1人がタイムキープをやって、1人がミットで受ける、1人が打つ。これは一番いいんだよね。すごい心肺機能が必要。気力も充実してくる。その武闘訓練を毎日やって、体力、気力を高めていた。

専制君主制から立憲君主制に

――それが結果的に成長の場面に……。

一つのあれになりましたね。企業というのは発展段階がある。創業した頃は、僕以外の3人の社員に、「当面、専制君主制でいくぞ。右行こうとか左行こうとか議論している時間はない。俺が左に行くと言ったら左に行く。だけど、それじゃダイエーと同じだ」と。当時、ダイエーがそうだったわけです。僕らは当時、反面教師にした。

「ダイエーは反面教師だ。絶対おかしくなる」と言っていたんだけれども、それはともかく、「まずは専制君主制でやるけれども、次は立憲君主制にする。次は民主主義にする。民主主義はいちばん大変だ。民主主義というのは自己責任だ。言いたいことを言えるだけで民主主義だったらそんな楽なことはない。言ったら責任をとらなきゃならない」ということを言ってきたわけです。創業の頃からね。

僕は言ったことはやろうというのが基本的な性格ですから、そのとおりやってきたわけです。

――今は立憲君主制ですか。

それから民主主義への移行期でしょうね。だから、マネジメントスタイルが変わってきている。だってそうでしょう。みんな割り算できるしね(笑)。

――よく割り算を教えましたね。

うん。だけど、それが一番重要なことだしという考えで、そのときどきやってきたんです。

――話は飛びますが、BSE(牛海綿状脳症)、この対応が各社バラバラで、あのときはどうでしたか。

もうすごかったですね。2003年12月23日、アメリカでBSEが出たという第一報が入って、そのときすき家は、吉野家さんも松屋さんもそうだけれども、100%、米国牛を使っていたわけです。ということは全部入らなくなるということだから、まずは「とうとう出たのか」と。えーっ?という感じではなかった。

国内でももう発生していたし、そのとき米国もわれわれは調べたわけです。そうすると、リスクはあるなというプロとしての認識はしていたわけです。当時の調査でいけば、大丈夫だという判断をしていたけれども、でも出たということで。

だけど、アントレプレナー(起業家)でしょう。アントレプレナーというのは性格として楽観主義なんです。悲観主義の人は創業したりしない。大企業でおとなしくしているでしょう。だから、まあ何とかなるだろうと。

今まで夏休みは家族旅行していたんだけれども、創業してから正月の1日だけ休もうということで2日から臨店していたわけ。山梨の店へ行ったり、地元の店も回ったり。遠いところに出してきたから、高崎へ行ったりと臨店してきたわけです。当時はみかんを持って臨店していたわけね。従業員は正月から働いているということもあってね。

初めて冬休みに家族旅行をしようと。奥さんと米国に行く予約をしていたわけ。そしたら、12月23日にこういう連絡が入ったんだけれども、アントレプレナーだから、俺がやれば米国に旅行するまでに何とか見通しがつけられるだろうと。楽観的でしょう? 

100%肉がないから、本当は大変なことだよ。だけど何とかできるだろうという非常な楽観主義で、2日間いろいろ情報を集めたりしていたんだけれども、これは思ったより時間がかかるなと。うちの注文した肉も、海上にあるやつも全部入れられないということが明確になってきて、スタッフに計算させると、国内に揚げているやつは使えるんだけれども、今の在庫でいくと2月上旬になくなっちゃう。もう1カ月ちょっとしかないと。待てよ、これはしゃかりきでやらないと会社がつぶれちゃうなと。

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