「鬼滅の刃」大ヒットの裏に飽きさせない神ワザ ビジネスにも応用できる「伝わる」力の3要素
『鬼滅の刃』に詰め込まれたテクニックを把握するために、まず「漫画家の心情」を解説したいと思います。
漫画家の多くは自信があると同時に、とても心配性です。「このエピソードは面白いに違いない」という確信と「でも、その面白さは読者にちゃんと伝わるのだろうか」という不安を常に抱えています。そのため、「過剰」に陥りがちです。
絶対に面白いエピソードが、もれなく伝わるように、ページ、コマ、セリフ、絵を増やしていきます。物語を前に進めることに手一杯で、だらだらと行動やセリフを連ねてしまいます。結果、まどろっこしい漫画になり、読者は見せ場に至った時点ですでに心が冷めていて、作り手が望むようには感情を動かしてくれません。
TikTok (ティックトック)のように15秒の短い動画で成立するエンタメが溢れる時代、そんなメタボな漫画を読み続けるほど現代人は娯楽に飢えていません。
『鬼滅の刃』は違います。テンポとスピード感に満ち、見どころが連続し、途中から読んでも楽しめ、しかも、登場人物に共感しながら一気に読み進められます。
急速ヒットに導いた「鬼滅のCDEメソッド」
『鬼滅の刃』が読者を離さないノウハウのポイントを、漫画編集者でもある筆者は「Cut」「Drip」「Emotion」の3要素にあると分析し、「鬼滅のCDE メソッド」と呼んでいます。このメソッドは、漫画以外のビジネスでも応用が可能です。「Cut」「Drip」「Emotion」をそれぞれ解説していきましょう。
これだけ人気があるのですから、連載はいくらでも引き伸ばせたはずです。ところが、敵のボスと最強の3人、主人公側の主要キャラ全員をいきなり一カ所に集結させ、最終決戦を同時並行でスピーディーに描いていきます。途中経過を大胆に削除し、見どころを一挙に凝縮させているのです。
また前述のように、1話分に値するエピソードを、1見開きで終わらせてしまいます。1要素を表現するために用いるページ数を極限まで減らしています。
普通の漫画家なら人気漫画は長く続けたいですし、盛り込む要素を減らすことに対して不安になるものです。『鬼滅の刃』では、それらを断ち切ってバッサリと削っています。だからこそ、展開の速さが実現できているのです。
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