人手不足の老人ホーム、あの手この手で挑む策 離職をどう防ぐかが業界が抱える大きな課題

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合掌苑以外でも、離職を防ぐ独自の取り組みをしている企業がある。さんわが運営する住宅型有料老人ホーム「シルバーヴィラ向山」(東京都練馬区、116床、介護職員数71人)の、2019年度の介護職員離職率は5.6%と、業界内でも低い。

そのうちの理由の1つが永年勤務の推進だ。「永年勤務の推進」というのは、「定年を設けていない」ことや「病気・怪我などで長期間休んでも復職できる」ことを指す。

「定年を設けていない」のは、「働いていたほうが健康でいられます。医者にかかる回数も減り、社会コストも下がります。税金を払い続けて健康を維持できれば、日本にとってこんなに良いことはありません」という岩城隆就社長の考え方による。

定年は設けていないが、70歳を超えるとフルタイムで働くことはきつくなるため、勤務日数を週3、4日に減らし、非常勤として働き続ける。非常勤になると、常勤に比べ賃金を下げる介護事業者がほとんどだが、同ホームでは、同一賃金・同一待遇としている。その結果、70歳を超えても半分以上の人が働き続け、現在働いている職員の最高年齢は80歳だという。

また、離職率が低いがゆえの、職員数の多さも、さらに離職を防ぐ要因になっている。介護業界における職員配置数は、要介護者3人対職員1人というところが多い。これに対し同ホームでは、1.7人対1人にしているが、「実質的には、1.5人対1人」だという。

同ホームは、住宅型有料老人ホームなので外部の訪問介護サービスやデイサービスを利用しており、これが0.2人分に相当しているそうだ。

キャリアアップできる環境も大切

このように両施設では、さまざまな取り組みをしているが、課題もある。両施設とも新しい取り組みが多いがために、運営方法に慣れるまで時間がかかってしまう職員も出てきてしまう可能性もある。現場、そして運営する側がしっかりマネジメントできるような体制作りがより必要になってくるだろう。

また、定着率がよいゆえに、キャリアアップなど、若手が希望したポストになかなかつけない場合もあるかもしれない。若手でもさまざまな経験を積めるよう、一緒にキャリアプランを考えることも大切かもしれない。

離職率を下げると同時に、職員の意識もさらに向上させられるような、コミュニケーションの取り方も、今後は重要になってくるだろう。

塚本 優 終活・葬送ジャーナリスト

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つかもと まさる / Masaru Tsukamoto

北海道出身。早稲田大学法学部卒業。時事通信社などを経て2007年、大手終活関連事業会社の鎌倉新書に入社。月刊誌の編集長を務める。2013年フリーライターとして独立。ライフエンディングステージの中で「介護・医療」と「葬儀・供養」分野を中心に取材・執筆している。ポータルサイト「シニアガイド」に「終活探訪記」を連載中。「週刊高齢者住宅新聞」などに定期寄稿。

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