最高裁判事指名でトランプ大統領「終了」の危機

これでアメリカの景気回復の遅れは決定的に?

一方のトランプ大統領にとっても、後任人事を急ぐ今回の方針決定は、かなり大きなギャンブルとなりそうだ。

確かにカトリック教徒の保守派判事を送り込むことで、キリスト教保守派の支持をより多く取り付けることは可能かもしれない。だが、もともと中絶反対派の人々は、トランプ大統領を支持している人が多く、新たな支持を獲得する効果があるのかは微妙なところだ。

むしろ、こうした強引なやり方を好ましく思っていない中間層の支持が、女性を中心にトランプ大統領から離れてしまう危険性が高いのではないか。

もし最高裁判所判事の後任指名人事が大統領選の主要な争点になれば、これまでの女性蔑視や人種差別的なトランプ大統領の発言や行動が、改めて批判の的になることも考えられる。今回の選挙は接戦で、どちらが勝利するのかは蓋を開けてみないとわからないとされているが、今回の問題をきっかけに世論が動けば、思った以上の大差で決着することもありうる。

株価の大幅下落で「トランプ大統領1期で終了」も?

何よりも、こうした状況下で、難航している「追加経済対策」の協議が消えてしまうリスクにも注意を払わなければならない。現在の相場は小康状態だが、ギンズバーグ判事が死亡した直後の株式市場(9月21日)は全面安の展開となった。これは後任人事を巡って政治的な混乱が深まるとの懸念が、大きく影響した可能性が高い。

下院民主党は5月に成立させていた3.5兆ドルの支援法案を修正、新たに2.4兆ドル規模の法案策定に取り掛かっている。だが、依然として共和党の主張とは大きな隔たりがあり、すんなりとこれが通ることはありえない。今回の承認指名をきっかけに与野党の対立が深まれば、大統領選までに支援策が成立する可能性はほぼゼロとなり、カンフル剤を失った同国の景気が再び失速してしまうリスクが一気に高まる。

一方、FRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長は9月22日、米下院金融委員会で証言を行い、雇用や経済活動は新型コロナウイルスの感染が拡大する以前と水準を大幅に下回ったままで、景気の先行きは非常に不透明だとの懸念を示した上で、追加の経済対策の必要性を強く訴えた。

先のFOMC(公開市場委員会)では少なくとも2023年まではゼロ金利政策が続くとの見通しが示されるなど、FRBは今後も積極的な緩和政策を打ち出すことを明確にしているが、それだけで経済を持ち直すには不十分という訳だ。

実際、失業保険の上乗せ給付が実質的に終了した7月末以降は、PPP(雇用維持プログラム)などほかの経済対策の効果も薄れてくるなかで、アメリカの景気の回復ペースは明らかに鈍ってきている。

与野党の対立激化で追加支援策の成立が遅れれば遅れるほど、今後景気が再び大幅に落ち込んでしまうリスクは高まる。それはいずれ株価の大幅な調整という形で市場にも表れてきそうだ。結局のところ、こうした形での株価急落が、回り回ってトランプ大統領の息の根を止めることになるのではないか。

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