ユニクロ成長のカギ握る「高機能素材」 ヒートテックやエアリズムに続く商品は出るか?

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ファーストリテイリングが運営するカジュアルブランド「ユニクロ」は、高機能素材を使った商品が成長エンジンとなっている。写真は都内で昨年4月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 14日 ロイター] - ファーストリテイリング<9983.T>が運営するカジュアルブランド「ユニクロ」は、高機能素材を使った商品が成長エンジンとなっている。時間をかけてヒット商品に育て上げた「ヒートテック」や「エアリズム」は、他社の追随を許さない機能を備えている。

今後もこのような高機能商品を開発し続けることができるのかは、同社の成長を大きく左右する要因になる。他社との協力も広げながら、開発に挑み続ける。

ゴルフでも、ビジネスでも

「ヒートテックとユニクロは一心同体。こうした商品を15は欲しい」---。同社のR&D統括責任者、勝田幸宏執行役員は、今年発売を開始した「ドライストレッチパンツ」をはいて現れ、このように語った。

同商品は、同社のグローバルブランドアンバサダーを務めるプロゴルファー、アダム・スコット氏のアドバイスの下に開発。戦略的パートナーである東レ<3402.T>と共同開発したポリエステル100%の新素材を使い、速乾性や軽量、ストレッチ性などを実現した。

スコット氏は、今年4月に米ジョージア州オーガスタで開かれたマスターズ・トーナメントでこのパンツを履いてプレーしたという。同じパンツを勝田氏はビジネスで、スコット氏はゴルフで着用しており「24時間、1週間、365日ライフウエア」というユニクロが目指す服の象徴と言える。

あと一歩の改良がモノ作りの基本

ユニクロの強みは、東レとの共同開発「ヒートテック」に代表されるような高機能な素材の開発・活用にある。ドイツ証券・シニアアナリストの風早隆弘氏は「ユニクロがやっていることは非常に時間がかかるし、大変だから他社はやっていない。ベーシック、高品質のところで勝てている」と評価する。

ヒートテックの発売開始は2003年。発売当初はそれほど注目を集めなかった商品も改良を重ね、2007年の大ヒットにつながった。「温かい下着」という発想は新しくないが、そこに機能を加え、進化させ続け、新たな領域を作った。発売から10年を経過した2013年、累計販売枚数は3億枚に達した。

柳井正会長兼社長はかつて「商品が進化しなければ、市場は成熟する。だが、ヒートテックは毎年、消費者の声を聞き進化している。まだまだ市場は拡大していく」と述べていた。「限界を作ってしまうとモノはできない」(勝田氏)というように、あと一歩の改良、あと一歩の進化という意識の共有がユニクロのモノ作りを支えている。

14日に公開された今秋冬のコレクションでは、フリースで新ハイテク素材を投入、「進化した暖かさと軽さをもたらす」という。ウルトラライトダウンの裏地にアルミプリントを施すことで、より保温性を高めたり、100%ウールのエクストラファインメリノは洗たく可能なアイテムを拡張したほか、毛玉ができにくい新機能を加えた。

ネットで注文すれば、その日のうちに商品が届く時代。勝田氏は「サイズって面倒。服も、朝オーダーして、夜着てサイズがピッタリだったら最高。会社の後にショッピングへ行かなくても済む」と、究極とも言える服作りについても柳井社長と話したことがあると語る。

自社でできないことはパートナーと

勝田氏は、発想を具体化する難しさを感じながらも「ヒートテックと言えばユニクロ。ひとつひとつのアイテムの集まりが店でありたい」とし「まだまだやれていないものは多い」と意欲を示す。

ブランドやマーケティング強化を掲げて社外から資生堂<4911.T>の社長に就任した魚谷雅彦氏は「消費者は、ユニクロの商品だから買うのではなく、ヒートテックだから買う。コーポレートブランドよりもカテゴリーとしてのブランドが大事で、カテゴリーのブランドを強くする」と目指す姿を語っている。企業の代名詞となるようなブランドの集まりが店舗であり、企業になるという考え方だ。

一方で、ユニクロがヒートテックを超えるブランドに育てたいとしている機能性肌着「エアリズム」は、シルキードライやサラファインの名前を変えただけだとし「新機能という意味では停滞感がある」(野村証券・マネージング・ディレクターの正田雅史氏)という厳しい指摘もある。

新たな機能を開発し、新たな領域の商品を生み出すことがユニクロの強みの源泉ならば、この停滞は、成長にとって致命的となる。

勝田氏は「素材に限らず、縫製やプリントなど、いろいろな可能性がある。自分たちでできないことは、共感、共鳴してもらったパートナーと一緒にやっていくスタンス」と話す。革新的なものを生み出すために、他社との協力の幅を広げる可能性も模索している。

 

(清水律子 取材協力:金昌蘭 編集:田巻一彦)

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