教育研究家の妹尾昌俊氏に聞いた、先生の「問題解決能力」が2極化する理由 ICT導入が負担増にならない環境づくりを
一方で、注意すべき点についてもこう指摘する。
「ある学校ではYouTubeさえ見られないなど、問題が起こるのを恐れるあまり、教育委員会や学校が過度に制限してしまっているという話をよく聞きます。そんな状態では、子どもたちもできることが限られてしまいます。また、1人1台用意するとなると、設定やトラブルシューティング、生徒や保護者からの質問といった課題が生まれます。これらをすべて先生が対応するとなると、ただでさえ多忙な先生の負担がさらに増してしまいます。ICT支援員を配置するところもありますが、たまにしか学校におらず、問題解決まで時間がかかると、子どもたちはICTを使わなくなってしまうでしょう。GIGAスクール構想を進めるのであれば、気軽に相談できる支援員等を校内に配置するのが理想でしょう。そうすれば、先生は授業準備等に注力できるようになります」
すでにICTを導入している学校の中には校務システムや出退勤に活用するなど、働き方改革につながるような動きも見られる。
「GIGAスクール構想を進めて生徒1人1台端末を整備することとは別に、ICTによる校務支援はやっていくべきでしょうね。ICTの導入は、運用の仕方次第で先生の負担を増やすリスクもありますが、メリットもたくさんあります。例えば、宿題も個々の習熟度や弱点に応じたものを課せるし、自動採点も可能です。一人ひとりの学習の進捗状況をモニタリングしやすくなります。評価もテスト一発勝負みたいなものではなく、日ごろの学習履歴などを活用して、丁寧なフィードバックをしていけるようになります。ICTの導入で先生の多忙が一気に解消するわけではありませんが、時間を有効に使えるようになるのではないでしょうか」
これまで教員の熱意と責任感、そして残業を前提とした働き方に頼ることで高水準を保ってきた日本の学校教育。ICTが浸透し、社会が大きく変化する今こそ、社会全体が学校教育のあり方についてもう一度考えるべき時期に来ているのではないだろうか。
妹尾昌俊
野村総合研究所を経て2016年に独立。中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員などを歴任。『教師崩壊 先生の数が足りない、質も危ない』(PHP新書)、『学校をおもしろくする思考法』(学事出版)など著書多数。5人の子の父でもある。
(写真:iStock)
制作:東洋経済education × ICTコンテンツチーム
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