教育研究家の妹尾昌俊氏に聞いた、先生の「問題解決能力」が2極化する理由 ICT導入が負担増にならない環境づくりを
しかし、コロナ禍によって想定外の事態が次々と起こり、教育現場でも社会全体でも新学習指導要領が目指す「問題解決能力」を、学校や教員が試されたと妹尾さんは指摘する。
「休校中、ドリルや穴埋め問題などの宿題を大量に出した先生や学校も多いようです。学校再開後も、教科書を終えなければと子どもとの対話や考える時間をはしょっている事例も耳にします。これでは子どもの思考力や探究心、クリエーティビティーを耕すことはできません。プリント学習が必ずしも悪いわけではありませんし、基礎的な学力を身に付けることも大切ですが、みんな同じの一律の宿題を出すよりも個に応じた学習を進めたり、対面での授業では協働して探究的なプロジェクトを進めたりする時間ももっと必要ではないでしょうか」
もちろん、コロナ禍ではさまざまな制約があり、できないことも多かったのは事実。しかし、そうした中でも子どもの興味・関心や好奇心を刺激する授業に取り組む事例も見られたという。
「例えば、リモートで、地元の気象台の方に地域の気候と地理について話してもらうという授業を行ったケースがありました。こうした授業はICTがなければできないわけではありません。ある中学の国語の先生は『感染症について過去の歴史など関連する本を読み、自分で情報を調べてまとめよう』という宿題を出していました。ちょっと難しい内容ですが、自分で情報を収集し、さまざまな情報を比較する能力が身に付きます。これなら、コンピューターがなくてもできますよね」
子どもが自分で問題を発見し、探究する。こうした思考力やクリエーティビティーを育む授業を行えるようにするにはどうすればいいのだろうか。
「やはり、先生自身が視野を広げ、新たな学びを続けることが重要なのではないでしょうか。今の先生は多忙なので、異分野の人と会ったり、本を読んだりといったインプットの時間が乏しい人もいます。より正確に申し上げると、二極化していることが私が実施した教員アンケートでも示唆されています。ICTの活用は必要なことですが、ICTを導入しても授業の内容や先生自身がアップデートされていないと、『活動あっても学びなし』という結果になりかねません」
ICT活用はあくまでもツール。新学習指導要領で目指す子どもたちの能力を育むには、働き方改革をはじめとした、教員の時間を生み出す動きが欠かせないといえるだろう。
カギは教員の負担を増やさないICT導入
ツールとしてのICTの導入や環境整備を支援するGIGAスクール構想。そこに妹尾さんはどんな期待を寄せているのだろうか。
「公立だけではなく私立でも、まだまだICT環境が整っているとは言えないところも多いです。1人1台なら日常的に使えるようになりますし、高速で安定したネット環境があればできることも広がります。ICTのよさは選択肢が広がること。一人ひとりの好奇心を膨らませていくような学習にICTを導入するといいのではないでしょうか」

















