トランプ再選「可能性は決して0ではない」理由 「2回連続の逆転勝利」に期待する支持者たち
①トランプの平均支持率は2期8年務めた過去3代の大統領(クリントン、ブッシュ息子、オバマ)より低いが、大きく劣っているわけではない。再選に失敗した過去2代の現職大統領(ブッシュ父、カーター)よりはやや上だ。それを考えれば今回の大統領選は五分五分の戦いとみるべきであり、投票日が近づくにつれてバイデンのリードは消えていく可能性がある。
②トランプは最近、バイデンをもうろくした老人扱いする戦術に出ていたが、右派のFOXニュースでさえ称賛したバイデンの指名受諾演説によって、この主張は(少なくとも討論会が始まるまで)説得力を失った。そこでトランプはすぐに作戦を変え、47年間に及ぶバイデンのワシントンでの政治経験を強調するようになった。中央政界での経験が長い候補者は、過去11回の大統領選で9回負けている。トランプが「バイデン=既得権益層のプロ政治家」というイメージを植え付けられれば、接戦に持ち込める可能性はある。
③現時点でアメリカの現状に満足している有権者は20%しかいない。しかし、再選を目指していたオバマもこの時期の有権者の評価は似たようなものだったが、投票日に向けて支持率を大きく伸ばした。新型コロナウイルスのワクチン開発が一気に進展したり、経済が予想以上のペースで回復した場合、トランプの支持率はオバマ以上に急上昇するかもしれない。
④共和党の大きな武器の1つは、熱心な支持者が必ず投票することだ。今回の選挙は郵便による投票が多数を占める可能性があり、この前代未聞の展開を考えれば、世論調査の信頼性は通常より低いはずだ。投票が困難になったり、選挙の手続きが異例のものになればなるほど、トランプ勝利の可能性は上がる。
トランプ支持者が心得ていること
⑤トランプ支持者は、人口動態からみて将来の選挙はどんどん不利になることを理解している。今回の民主党全国大会で見られた多様性は、白人・男性・高齢者主体の共和党の活気のなさを改めて浮き彫りにした。トランプ支持者にその意識が強くあれば、彼らの投票率が予想以上に上がり、トランプを当選ラインに押し上げるかもしれない。
トランプは前回選挙時の側近がまた1人逮捕されたのを見て(当時の最側近5人のうち4人が起訴され、2人が収監中)、この選挙にすべてが懸かっていることを肝に銘じたに違いない。油断は禁物だ。現時点で世界最大の地政学的リスクはアメリカの大統領選挙かもしれない。
<2020年9月1日号掲載>
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