濁流が飲み込んだ線路…「九州鉄道被災」の現場

駅や車両も被害、一部区間は全容把握できず

福岡県の久留米と大分県の大分を結ぶ久大本線は、豊後中村―野矢間の「第二野上川橋りょう」が流されたほか、トンネル・線路への土砂流入や盛土流出など145件の被害が確認されている。同線は2018年7月、前年の九州北部豪雨で被災した日田―光岡間の花月川を渡る鉄橋が架け替えられ、約1年ぶりに全線再開を果たしたばかりだった。

鹿児島本線は熊本県内の玉名―肥後伊倉間、鹿児島県内の木場茶屋(こばんちゃや)―串木野間、上伊集院―広木間で大規模な土砂流入など26件の被害が出た。肥薩線、久大本線、鹿児島本線以外の線区でも倒木や線路浸水などを含め、109件の被災が確認されている。

JR九州管内は7月3日からの8日間で、計20路線の運休が発生し、約19万人の利用者に影響した。被災箇所が特定できている鹿児島本線については運転再開へ向けた工事に着手しており、鹿児島の上伊集院―広木間は7月中、ほかの2区間は8月上旬の復旧を目指す。

豪雨で甚大な被害が出た熊本県八代市坂本町にある肥薩線の踏切(記者撮影)

しかし、肥薩線の八代―真幸間、久大本線の日田―向之原(むかいのはる)間は復旧の見通しが立っていない。この2路線に関しては、まだ「被害規模の全体を把握することを優先している」(吉野敏成・鉄道事業本部施設部長)といった状況だ。

JR以外に第三セクターが運営する路線にも大きな被害が出ている。熊本県の人吉盆地を走る「くま川鉄道」は保有する5両の車両すべてが浸水。八代と鹿児島県の川内を結ぶ第三セクター「肥薩おれんじ鉄道」は、7月10日時点で土砂流入や道床流出など45カ所の被害を確認、八代―水俣間を当分の間運休にする。

肥薩線は壊滅的な被害

球磨川の氾濫で壊滅的な被害となった熊本県八代市坂本町。7月15日の昼も浸水した家屋の片付けや清掃をする住民の姿が見られた。

坂本駅は木造駅舎。駅前には横転した車が残されていた(記者撮影)

坂本駅近くの住宅地では、流されてきた建物の一部が踏切をふさいでいた。肥薩線の坂本駅は、八代駅から球磨川沿いに営業キロで11km上流に進んだ地点にある。観光客に人気のSL人吉、いさぶろう・しんぺいのほか、「かわせみ やませみ」が停車する。木造駅舎の前には2台のひっくり返った車がそのまま置かれていた。

上流の盆地に広がる人吉の市内も、球磨川に近い地区では、ぬかるんだ道路の両側に使えなくなった家財道具が積み上げられていた。災害派遣の自衛隊車両と隊員の姿も目立つ。国宝「青井阿蘇神社」の前の蓮池には上下逆さまになった車が沈み、3連アーチが特徴の「禊橋」の壊れた赤い欄干が水位の高さを表していた。

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