京アニ放火から1年、「酷似事件」に探る"先行き"

その事件は京アニ放火と同じ7月に起きた…

はたして青葉容疑者を起訴できるのか。起訴されたとしても、裁判で罪を問うことはできるのだろうか。刑法39条では、心神喪失は無罪、心神耗弱は減刑とされている。

この戦後最悪の事件の先行きを見通すにあたって、振り返っておきたい、そっくりな事件がある。ガソリンをまいた放火殺人事件で、そこでも被告人の精神状態が争点となった。

その事件は同じ7月に起きた

くしくもその事件は、京都アニメーション放火殺人事件のちょうど10年前の同じ7月に起きている。

2009年7月5日、大阪市此花区の雑居ビル1階のパチンコ店に男がガソリンをまいて放火。約400平方メートルの店内は全焼し、客や店員5人が死亡、10人が重軽傷を負った。

その翌日、「自分がやった」と山口県警岩国署に出頭してきた高見素直が逮捕されている。ちなみに、このときの高見の年齢は41歳。青葉容疑者の犯行時の年齢と同じだ。

検察は高見を起訴する前に、精神鑑定を実施している。その結果は「妄想型統合失調症」に罹患しているとされた。

ところが、検察は刑事責任能力を問えるとして、高見を起訴したのだ。すると、高見は大阪地方裁判所での裁判員裁判でこう言いだした。

「30歳くらいのころから、女性らの声で嫌がらせを受けるようになった」

この女性を高見は「みひ」と呼び、もう1つ「マーク」という集団と一緒に、「左手を使うな、とか、『あー』や『うー』という言葉を使うな」などと語りかけ、言うことを聞かないと「身体が重くなったり、急に腹痛がしたりする」というのだ。

世間の半分くらいは「みひ」や「マーク」の存在を知っているのに、見て見ぬ振り。自分だけが苦しめられている。だから世間の人に復讐する。

大きな事件を起こせば、間接的に「みひ」や「マーク」への復讐になる。そのためにガソリンを購入し、マッチで火をつけたのだ、と主張。明らかに妄想が入っている。

弁護側は、起訴前の鑑定を根拠に、心神喪失ではなく犯行時は心神耗弱にあったとして、求刑された死刑の回避を求めた。

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