新型N700S、リニア暗雲吹き飛ばす颯爽デビュー 抜群の安全対策で東海道新幹線の主役を張る

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しかし、これで万全というわけではない。巨大地震によって東海道新幹線が長期間不通になる可能性もある。そこで、東海道新幹線が担っている東京ー名古屋ー大阪という都市間大動脈輸送を2重系化してリスクに備えることを目的に建設が進んでいるのが、リニア中央新幹線である。

品川―名古屋間2027年開業というリニアの工事実施計画は2014年10月に国から認可を受けている。しかし、それから5年以上たった今も静岡工区に限ってはいまだに工事が始まらない。静岡県が「南アルプスのトンネル工事は水資源や自然環境への深刻な影響を与えるおそれがある」として、県内における工事に合意していないのだ。

JR社長と静岡県知事のトップ会談

トンネル工事が水資源や環境に与える影響について国の有識者委員会が議論を重ねており、その結論が出るまでJR東海はトンネル工事を行わない。しかし、JR東海は「トンネル工事の前段階に当たるヤード整備などの準備作業だけでも6月中に開始しないと2027年の開業が難しくなる」として、金子社長が静岡県の川勝平太知事に6月26日に面会して、工事開始について理解を求めた。

7月1日の「N700S出発式」で挨拶するJR東海の金子社長。リニアについては「新しく申し上げることはない」としている(撮影:尾形文繁)

県はヤード整備はトンネル工事と一体であるという見方を取っており、これを踏まえれば工事は認められないことになるが、JR東海はトンネル掘削工事とは明らかに区分けできる作業があると考えていた。約1時間20分に及んだトップ会談ではこの点について突っ込んだ議論は行われなかったが、川勝知事が金子社長に「自然環境保全条例に従って県と協定を結べばヤード整備は可能」と、手続きについて発言したことで、JR東海側はすみやかに協定を結べばヤード整備に着手できると受け止めた。

しかし、会談後の記者団への取材に対して、知事の態度は一変した。ヤード整備はトンネル本体工事と一体であり認められないという従来の発言を繰り返したのだ。JR東海は知事の会談の発言と記者団への発言が一致しないとして困惑。同社は県の考えを確認する文書を6月29日付で県に送った。現在は、県からの回答待ちの状態で、7月1日のN700S出発式後の取材でも、金子社長は「新しく申し上げることはない」と述べている。

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