平成のゼロ戦、「心神」が年内初飛行へ 第6世代戦闘機となる"カウンターステルス機"の礎

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富士山を背景に描かれた「心神」

心神の特徴は、優れたステルス性と機動性にある。敵レーダーに探知されずに敵を捕捉できる高いステルス性能、先進アビオニクス(航空機搭載の電子機器)、耐熱材料など、日本企業の技術を活用した高運動性を武器とする。

エンジンは双発。IHIが主契約企業となってアフターバーナーを備えたツイン・ターボファン方式のジェットエンジンXF5-1を開発した。最大出力は各約5トンで、2つ合わせて10トン級。各エンジンの出力方向を機動的に偏向するためのエンジン推力偏向パドルをエンジンの後方に3枚ずつ取り付け、エンジンの推力を直接偏向できるようにした。

この推力偏向パドルと、エンジンと飛行双方の制御を統合化したIFPC (合飛行推進力制御)技術によって、「従来の空力舵面では不可能な高迎角での運動性を実現した」と技本は説明する。つまり、この高度な制御技術を使えば、これまでだったら迎角が50度を超えて失速しそうな飛行場面でも、機体制御が可能となり、空中戦での戦闘能力が高まるとみている。

このほか、主翼と尾翼は富士重工業、川崎重工業が操縦席を製造している。機体の約3割に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が使われ、軽量化されている。

IHI製のエンジン(筆者撮影)

心神は全長14.2メートル、全幅9.1メートル、全高4.5メートルの単座式だ。「世界最強のステルス機」とされる米国のF22やF2よりは小さく、T4中等練習機よりは大きい。最大速度は明らかになっていない。

心神は、F2戦闘機の後継機となる将来の「第6世代戦闘機」であるF3の生産に向けたプロトタイプ(研究試作機)である。つまり、防衛省は、心神を「第5世代戦闘機」と呼ばれる現在のステルス機の上を行く、「第6世代戦闘機」のカウンターステルス機の礎にすることを目指している。

航空自衛隊(空自)は昨年3月末現在で、ベトナム戦争で名を馳せた第3世代のF4を62機、主力戦闘機である第4世代のF15を201機、そして、米ゼネラル・ダイナミクス(後にロッキード・マーチンが軍用機部門を買収)のF16Cをベースに日米で共同開発された第4世代のF2を92機それぞれ有している。

このうち、老朽化して退役が迫ったF4の後継機として、2011年12月、民主党時代の野田佳彦政権の下、日本政府は米国主導で国際共同開発中のF35を次期主力戦闘機(FX)として選定した。

部隊配備は2030年代前半か

F2の後継機となるF3だが、開発の開始時期から考えて部隊配備は2030年代前半になってから、とみられている。このため、2030年代後半から退役が始まるF2の後継機となることが可能だ。しかし、2020年代後半から減勢が始まるF15の後継機となるのは時間的に厳しそうだ。技本の幹部は、「F3はF15の後継機としては間に合わない。F35がF15 の後継機となる」と打ち明ける。

ただ、こうなると、現在はF4F15F2の三機種体制が、将来はF35F3の二機種体制になりかねない。設計ミスが見つかったり、原因不明の墜落事故を起こしたりして、両機に同時に「飛行停止措置」がかかった場合、運用可能な戦闘機がなくなってしまう。実際、2007年には一時的とはいえ、F15F2が同時に飛行停止となり、老朽化したF4のみが日本の空を守る事態に陥ったこともある。

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