日比谷線THライナー登場、指定席の需要あるか

コロナ後「脱・満員電車」時代の先駆けに?

一方、東武線内では本格的な急行運転を実施する。東武鉄道は北千住―北越谷間を複々線化しており、内側の線路2本を各駅停車、外側の線路2本を急行列車が使用している。

これまで日比谷線直通列車はすべて各駅停車用の線路を走行していたが、東武鉄道は「THライナー」運行開始に合わせて、西新井―梅島間に内側の線路と外側の線路を移動できるポイントを新設し、日比谷線直通列車が急行用の線路を利用できるようにしたのである。ここからも東武鉄道の、この列車への期待の高さがうかがえる。

近年、首都圏の私鉄各社で「THライナー」のような座席指定列車の導入が相次いでいる。もともと有料特急列車を運行している東武鉄道、西武鉄道、小田急電鉄、京成電鉄は、朝ラッシュ時間帯の上り方面と夕夜間の下り方面に通勤向けの特急列車を運行していたが、こうした特急車両を持たない路線でも着席通勤のニーズに応えた座席指定制列車を相次いで導入している。

たとえば2017年3月に西武鉄道は池袋線と地下鉄有楽町線を直通する座席指定列車「S-TRAIN」の運行を開始。2018年3月には、同じく西武鉄道が西武新宿線・拝島線直通「拝島ライナー」を、京王電鉄が京王本線と京王相模原線に「京王ライナー」を、同年10月に東急電鉄が大井町線の一部急行列車に座席指定車両「Qシート」を連結して運行を開始した。

「通勤特急」専用車では採算取れず

こうした列車が相次いで導入される背景には今後、沿線人口が大きく増える見込みがない中で、新たな収入源を確保しようという狙いがある。とはいえ、専用の車両を用意して座席指定制列車を新たに始めても通勤特急だけでは到底、採算を取ることはできない。

たとえば、片道1時間程度の路線に、10両編成(定員500人)の着席列車を1日10本走らせるとすると、必要な編成数は予備を含めて5本。車両1編成が20億円とすると、100億円もの投資が必要だ。

乗客は定期券利用者がほとんどなので運賃収入は期待できない。1人あたり500円のライナー料金を収受するとして、平均乗車率が80%で1日あたり200万円、これを1カ月の平日20日間、1年間運行して5億円の収入になる。これでは20年かけて車両製造費を回収するのがやっとで、実際には券売機の設置や指定席発売システムの構築などさらなる投資が必要になるため、ビジネスとしては成り立たない。

小田急や東武の有料特急にとって、「本業」はあくまでも日中時間帯の輸送である。観光やビジネスニーズの少ない朝や夕・夜間に走らせる通勤特急は、特急車両にとっては割のいい「副業」であり、だからこそ成り立つ商売だった。

この構図を塗り替えたのが、東武鉄道が2008年から東上線で運行を開始した「TJライナー」であった。

次ページ複数の役割をこなす車両の登場で実現
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