武富士に巨額損失!メリルの「責任」とは 武富士・巨額損失の真実

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 この手の投資において、アレンジャーは、その時価を定期的に顧客に報告するのが通例だ。メリルも武富士に報告していたようだが、昨年末までは元本100に対して評価価格(時価)が80台と伝えられていた模様だ。とりわけ、担保社債についてはパー(額面)で評価し続けていた。ところが、年明け以降、事態が激変。メリルが報告する評価価格は2月に60まで下がり、そこからは一気に奈落の底に落ちた。

メリル提案スキームは本当に適切だったのか

今回、メリルの行動について、米系投資銀行関係者は「サブプライム問題の発生によって、SIVの流動性喪失は昨年夏に鮮明化していた。それを年末までパーで評価し続けたのはなぜか」と首をかしげる。流動性が喪失されれば、価格形成はできない。だから、価格は変わらないともいえるが、実態としては、値がつかないほど価値(フェアバリュー)が失われていたということだ。

さらに言えば、ディフィーザンスという安全性・確実性が求められる投資スキームに対して、今回、組み込まれた金融商品が適合していたのかという疑問もある。SIVの担保債券や、それを担保資産としたCPDOはいずれも、ここ最近出たばかりのハイリスク商品だ。オフバランス化に関する金融商品の会計実務指針においては、その適格要件を「国債・政府保証債」とし、そのほかに「ダブルA格以上の社債・銀行預金」としている。確かに、今回のSIVノート(担保債券)は購入当初、トリプルA格だった。が、現在、証券化商品に関して問われているのは、格付けそのものの妥当性だ。

メリルは個別案件を理由にコメントを控えている。同社が武富士への説明義務を形式上果たしたことは確かなようだ。しかし、実質的にはどうだったのか。金融商品取引法や金融庁が提唱する「ベターレギュレーション」(よりよい規制環境)は「形式」だけではなく、「実質」も重視している。仕組み金融や証券化市場の信頼性を確保するうえでも、今回の一件をめぐる議論は深められるべきだろう。
(浪川攻記者 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済3月15日号より)

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