鹿児島から異色アートを発信する男の快活人生 「しょうぶ学園」がありのままを受け入れる訳

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「しょうぶ学園」にはもともと、キレイに整備された庭があった。

福森さんの

「人間は自然に生きたほうがいいよね」

という考え方のもと、段々そこは「山」に近づいている。

雑草のような草を植えて、その横に本当の雑草が生える。伐採される予定の雑木林の木を、移植した。

少しずつ園内の庭は、山の木がある自然な森に近づいている。

園内の庭には動物もいる(©︎しょうぶ学園)

「森にいたら誰も木の枝ぶりのことを言わないんですよ。でも木を学園に持ってきたら、

『この枝ぶりはいいねえ』

とか、みんなが枝ぶりのことを言い出すわけですね。それで園内の庭が森のようになってしまった今は、また誰も枝ぶりのことを言わなくなりました。

利用者の人たちも学園内にいるときは、障害性を感じないんですよね。枝が批判されないように、障害者の人たちも特異に見えない。

でも外に出てしまうと、枝ぶりを批判されたりしてしまうんですね」

かねての夢だった劇場がオープン

福森さんには、かねて劇場を創りたいという夢があった。

夢を思い描いてから20年。2019年に子どもたちの施設にホールを備えた〈しょうぶ文化芸術支援センター “アムアの森”〉がオープンした。

3階建ての建物で、ホールに250人のキャパシティがある。館内ではコンサート、講演会、レクリエーションなどもできる。

「この施設を、どう使うか、どう色をつけるか、というのが当面の目標ですね」

『ありのままがあるところ』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

最後に福森さんに、これからの目標を聞くと

「何も考えていないんですが、何かを考えつく脳でいたい、発想が生まれる状態でいたいなと思っています。思いついたらいいし、思いつかなければ終わりですね」

と語った。

福森さんは、年を重ねるごとにさまざまな人の自分とは違う思考や行動も受け容れたり納得できるようになったりしたという。

だからこそ「しょうぶ学園」はありのままでいられる場所なんだろうな、と思った。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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