鹿児島から異色アートを発信する男の快活人生 「しょうぶ学園」がありのままを受け入れる訳

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ただ福森さんの妻は、作品を世の中に広げることをあまり快く思っていないという。園内だけで十分、と考えているそうだ。実際、利用者の人たちも、積極的に認められたいと思っているわけではない。

「でも僕は世の人々にこの行為の美しさを広げたいんです。彼らの作品を世の中に出したら、障害者の人たちを理解する人たちが増えると信じています」

福森さんが43歳の当時、施設長をしていた福森さんの父親が脳梗塞で倒れた。自宅療養をしていたが、もう施設長はできないので、福森さんが引き継ぐことになった。

「いきなりトップになったらビビってしまい保守的になりました。社会福祉士の資格を取ったり、いろいろ勉強したりと真面目に取り組みました。

しばらく真面目路線でしたが、50歳を過ぎて、いろいろ吹っ切れてきました。

50歳を過ぎていろいろ吹っ切れてきたと話す福森さん(筆者撮影)

『障害っていったい何なんだろう?』

『彼らのほうが正しいんじゃないだろうか?』

そんなことを考えるようになりました」

福森さんは、年々考えが変わってきている。反面、利用者の人たちはブレない。知行合一、知識と行動がまったく同じなのでブレようがない。自分よりも、彼らのほうがずっとバランスが取れた人間なのかもしれないなと思う。

「幼子が、オモチャを選ぶとき、無垢に手触りだけで選びますよね。

成長すると、自動車のおもちゃだから欲しいとか、価値があるから欲しいとかになっていきます。

でも、彼らは触って気持ちがいいから持つ、という無垢な感覚を持ち続けているんですね。

僕たちは、いろいろ刷り込まれて惑わされているんです。

でも本当は、赤が好き!! 緑が好き!! という無垢な感覚は僕らの中にまだあって、きっと呼び起こせると思うんです。ここ10年はずっとそんなことを考えています」

福森さんが、利用者の人たちと音楽を始めて20年になる。そのライブは、みんなバラバラな気持ちのまま演奏する。

そろえずにみんなバラバラでそれでいい

例えば演奏会に行く目的すら人それぞれだった。福森さんはもちろんライブをするのが目的だけど、利用者の中にはただ

「東京に行く!!」

というだけの心持ちの人もいる。

「ラグビーをやっていたときなんかは、前日からミーティングして、明日勝つための作戦を練って、みんなと心を1つにするよう努力しました。ラグビーのワールドカップでは『ワンチーム』という言葉が話題になりましたよね。それはそれで美しいと思います。

でも僕のやっている音楽活動は、それとはまったく逆のパターンなんですね。そろえないのが面白いんです。みんなバラバラでそれでいい。

みんな違う考えなのに、みんなで同じ飛行機に乗ってライブに行くんだなって

『おもしろいなあ』

って思いました。

みんなバラバラだとすごい面白い音ができることもあります。もちろん面白くない音もたくさんできます(笑)。でもそれがいいんですね。拙著のタイトルの『ありのままがあるところ』もそういう感覚から来ています。」

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