楽天のカルチャーは「お寺」に似ている? 楽天・三木谷社長ロングインタビュー(その4)
日本経済の猶予は、5〜10年
――最後に、これから起業したいと思っている人や、企業の中でイノベーションを起こしたいと思っている人たちに向けて、何かメッセージを。
やっぱり失敗を恐れずにチャレンジするということですよね。たとえば、独立起業して失敗したらどうしよう、と思うかもしれませんが、なんとかなりますよ。だから、どんどん果敢にチャレンジしてほしいと思います。
――なぜ失敗を恐れてしまうのでしょうか。
周りの環境でしょう。家庭環境かもしれないし、同僚かもしれないし。そういう人たちがとにかくネガティブなことを言うんでしょうね。
私の場合は、たまたま阪神大震災に遭って、今までの社会的地位であったり、街であったりが、ずっと続くわけではないことに気づく強烈な機会がありました。
2011年には、東日本大震災がありましたが、そういうきっかけがないと、世の中の考え方はなかなか変わらないのかもしれません。日本はどちらかというと水田文化で、「目立つとダメ」となりがちなので、それを変えていかないと、企業家がどんどん出てくる流れは生まれない。ですので、新経連としては、表彰制度を作ったり、政府に働きかけていったりして、特に若者の意識を変えていきたいと思っています。
――究極的には、「死を意識する」「死から逆算して生きる」という意識が必要だということですか。
ハードボイルド的に言えば、そうですね。もう少し気楽に考えると、「なんとかなるわ」と。
――三木谷さんは、3月11日が誕生日です。
神戸出身で、誕生日は3月11日で、野球チームは仙台ということで、なんとなく地震と深い関係があるのかなと思ってしまいますね。
2011年の3月11日は、会社で誕生会をやってくれていたら、ガーッと揺れ出した。福島の話も含めて、あの日をきっかけに考え方が変わったと思います。やっぱり変えられるときに一気に変えないといけない、という思いがある。でも、このままいくと、また元に戻ってしまいそうな危惧が私の中には少しあります。
――安倍首相はそういう問題意識をしっかり持っていますか?
持っていらっしゃると思いますよ。ただ今ちょっと、憲法問題が中心になってきてしまっているので、どちらかというと、経済問題を優先してほしいと僕は思います。
――日本経済の寿命といいますか、変革するための猶予はどれくらいあると思っていますか。
ヨーロッパも調子がいいわけではないので、主な競争相手は、中国、韓国、アメリカ。加えて、メキシコも調子がよくなってきています。日本の製造力だけで食っていけるのは、そんなに長くない、5年から10年ぐらいだと思っています。
今後、日本の製造業は海外に工場を作って、ビジネスをしていくのが基本形になっていくはずなので、日本の中でどうやって雇用を創るかを考えていかないといけない。