五輪延期で不透明化する「ポスト安倍」レース 21年10月任期満了の衆院解散時期も流動的に
さらに複雑なのが2年延期のケースだ。安倍首相にとってコロナの収束次第で2020年末から2021年夏までの解散断行が選択肢となる。仮に2021年6月に想定される通常国会閉幕時に解散して、国政選挙7連勝となれば「4選論」か「五輪閉幕後までの総裁任期1年延長論」が浮上しそうだ。
その場合は「首相の本音とされる院政への道も開ける」(細田派幹部)が、「選挙に負ければ即退陣」(自民長老)ともなりかねない。
その一方で、それぞれのケースでポスト安倍の構図も変わる。最有力候補とされる岸田、石破両氏に加え、党内有力者の菅義偉官房長官、茂木敏充外相、加藤勝信厚労相、河野太郎防衛相、さらに小泉進次郎環境相や初の女性首相を目指す野田聖子元総務会長と多士済々。ただ、それぞれの立ち位置がコロナ対応などで変化している。
ポスト安倍候補は多士済々だが…
永田町で本命視されている岸田氏は、党の政策責任者として超大型経済対策策定で指導力を発揮できれば、低迷が際立つ同氏の支持率が上向く可能性がある。これに対し、各種世論調査での「次の首相にふさわしい政治家」でトップに立つ石破氏は、党所属国会議員票と全国党員・党友票が「1対1」となる本格総裁選の実施が当選へのカギとなる。
この両氏と並んで有力視されてきた菅氏は「2019年秋に、菅氏側近とされる2閣僚の連続辞任などで安倍首相との関係にひびが入った」(自民幹部)とされ、コロナ対応でも失速が目立つ。また、環境相就任後に「セクシー発言」などで批判された小泉氏も、「次どころか10年後を見据えて新規まき直しが必要」との見方が支配的だ。
茂木氏は外相としての手腕の評価が高いが、自らが所属する竹下派内での求心力は「まだ不足している」(同派幹部)のが実態だ。同派同僚でもある加藤氏はコロナ対応の先頭に立つが、「官僚臭が抜けず、決断力不足を露呈した」(閣僚経験者)とこちらも脱落ムードだ。
2019年9月に外相から防衛相に転身した河野氏は総裁選出馬への意欲を隠さない。ただ、所属派閥・麻生派の領袖である麻生太郎副総理兼財務相が「一般常識に欠けている」などと指摘し、「出馬しても当選は困難」(自民幹部)との見方が多い。さらに、野田氏は前回総裁選時と同様に「20人の推薦人集めが課題」とされ、「出てもお飾り候補」(自民長老)とみられている。
現在五輪関係者の間で最も有力視されている1年延期となれば、安倍首相が任期どおり退陣するのか、そして総裁選前の解散断行で「続投への勝負」に出るのか、さらには総裁公選規程を変えられるのか、といった不確定要素が絡んでくる。こうしてみると、結局は「首相の腹次第」(自民長老)となりそうだ。
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