楽天、データ無制限の格安プランが抱える制約 大手より大幅に安いが顧客獲得は容易でない

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楽天モバイルの料金発表会見を見終えた大手キャリアの関係者は、「正直、ホッとした。(今すぐの料金競争勃発など)当面の危機は去った」と胸をなで下ろした。そして、「現行の無料サポータープログラムの拡大版という印象だ」とも口にした。

もともと、楽天モバイルは携帯電話の商用サービスを2019年10月に開始する予定だったが、基地局整備が遅れたことから2020年4月にずれ込んだ経緯がある。この間、楽天モバイルは一部の利用者(現在は2万5000人)を対象に、通話もデータ通信も無制限の「無料サポータープログラム」を実施している。2020年4月以降の1年無料もテスト段階の延長程度のものに映ったというわけだ。

今後の焦点は、楽天モバイルが基地局の設置を拡大して、「データ使い放題」のエリアをどれだけ早く広げられるかだ。2020年2月末の基地局数は3490と、総務省が「必達」としていた2020年3月末の目標(3432)を超過している。3月末で4400を目指しており、以降も全国各地で自社回線エリアの構築を進める。

スピードと品質の両立が不可欠

楽天モバイルの山田善久社長は「計画より大幅に前倒しで自社回線エリアを広げていきたい」と意気込む。スピード感は重要だが、通信品質の確保も不可欠だ。基地局数は増えたが「つながらない」という不満が相次げば、信頼性を損なうおそれもある。

また、キャリア各社の足元(19年10~12月)の解約率は、ドコモが0.43%、KDDIが0.61%、ソフトバンクが0.53%と超低水準。楽天モバイルが使い放題のエリアを広げても、どこまで顧客を取り込めるかは不透明だ。顧客獲得には即効性がある「1年無料」も財務を毀損する副作用があるので、延長は厳しいだろう。

楽天の2019年12月期のモバイル事業は先行投資がかさみ、約600億円の営業赤字。だが、財務責任者の廣瀬研二氏は3月3日の会見で「(携帯事業は)3年程度で黒字化できるのではないか」と語った。そのためには、有料のユーザーをしっかり取り込む必要がある。

通信業界に詳しいMM総研の横田英明常務は、「1年間無料(のメリット)は大きいので、自社回線エリアの居住者ならば2台目の需要はある程度取り込めるだろう」と分析し、「その間に自社回線エリアを広げつつ一定の評価も確立しながら、ポイント付与策などで楽天経済圏に取り込んでいくことが重要だ」と指摘する。第4のキャリアとしての足場を築くうえで、今後1年がまさに勝負となる。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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