宮崎駿に「ナウシカ」作らせた男の凄いハッタリ 鈴木敏夫の想い詰まった「仕事道楽」の魅力

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ぜひ、つくり手の“想い”がこもった本を手に取ってもらいたいのですが、もう1つ、スタジオジブリの映画プロデューサー鈴木敏夫さんの『仕事道楽』も、ぜひここで紹介したい本です。

ジブリの成り立ちについて書かれた本なのですが、鈴木さんは元々、徳間書店の芸能誌の編集者でした。その後、アニメ誌をつくることになり、その編集長として異動するのですが、最初はアニメのことを知らなかったそうです。

そこで、女子高生たちにアニメの流行について聞くと、高畑勲さんの名前が出てきたため、高畑さんにインタビューを申し込みます。

すると電話で1時間くらいかけて、高畑さんから「なぜ僕があなたのインタビューを断るのか」を語られて、揚げ句に「この男ならインタビューを受けるかもしれない」として紹介されたのが、宮崎駿さんだったそうです。

この時点で面白いのですが(笑)、そこからジブリをつくっていく過程が本当に面白く、僕もプロデューサーとして勉強になりました。

『風の谷のナウシカ』誕生秘話

例えば『風の谷のナウシカ』が公開されるまでの裏話です。実は宮崎さんは、映画デビュー作でもある前作『ルパン三世 カリオストロの城』が当時、興行的に不入りだったため(今のような人気が出てきたのはテレビ放送などによる影響です)、しばらく映画製作にたずさわれなくなってしまいます。

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『ナウシカ』が劇場版アニメとして公開されたのは『カリオストロ』から5年後です。今では信じられない話ですが、その5年間“天才・宮崎駿”は干されていました。

しかし、宮崎さんを天才だと信じていた鈴木さんは、絶対に次回作をつくらせたいと思っていたので、まず自分の雑誌に『ナウシカ』の原作を連載させます。

そして、映画会社やテレビ局の人に「今このマンガが話題です」と誇張(ハッタリ?)して伝え、映画化を実現させたのです。

このように、自分が天才だと信じた人に、どうやって映画をつくらせるかという話が書いてあって、鈴木さんの強い想いに触れることができます。「専門家でなくても、頑張れば専門家になれるのだ」と。

どんな本なのか気になった方は、迷わずに買って読んでみてください。

角田 陽一郎 バラエティプロデューサー/文化資源学研究者

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かくた よういちろう / Yoichiro Kakuta

バラエティプロデューサー/文化資源学研究者。東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビ入社。「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」「オトナの!」など主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社goomoを設立。2016年にTBSを退社。映画『げんげ』監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、舞台演出など多様なメディアビジネスをプロデュース。現在、東京大学大学院博士課程にて文化資源学を研究中。著書:小説『AP』『最速で身につく世界史/日本史』『なぜ僕らはこんなにも働くのだろうか』他多数。週刊プレイボーイにて映画対談連載中、メルマガDIVERSE配信中。

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