イラン司令官殺害、米軍の攻撃は正当なのか 国内向けと対国連で異なる説明をするわけ
国際社会にはさまざまな条約や国際社会の慣習から成り立つ国際法があり、各国はそれを守らなければならないことになっている。その国際法では戦争は原則として禁止されている。したがってアメリカのような大国が軍事力にものをいわせて、好き勝手をやることは許されていない。
ところが、残念なことに国際法には強制力が伴っていない。違反をした国の違反行為をやめさせたり、制裁を科すような力を持った国際組織がない。そのため頼りにならない法律ともいわれている。アメリカのトランプ大統領は就任後、国際社会の合意やルールなどお構いなしの言動を続けており、その結果、国際法の頼りなさがいっそう浮き彫りになっている。
司令官殺害は国際法との整合性をうまく説明できない
年明け早々、アメリカ軍がイランの軍事組織である革命防衛隊幹部のスレイマニ司令官を殺害した件もその一例だろう。ところが、アメリカ政府は意外にも、アメリカ軍の武力行使の正当性の説明をめぐって混乱に陥っている。国際法との整合性をうまく説明できないためのようだ。
今回のアメリカ軍の攻撃はスレイマニ司令官という特定の個人の殺害を目的としている。個人がやったのであれば、暗殺や殺人であり、れっきとした犯罪である。もちろんアメリカはそんなことを認めていない。大統領の命令を受けたアメリカ軍という軍事組織による武力行使であり、アメリカの安全を守るための自衛権の行使であると説明している。
問題はその理由だ。トランプ大統領は当初、殺害の理由について「差し迫った脅威」を挙げていた。しかし、議会やマスコミから「差し迫った脅威についての明確な証拠がない」などと批判が出てきた。すると、トランプ大統領は「スレイマニ司令官による4つのアメリカ大使館攻撃計画があった」と述べた。予想される攻撃に対し自衛権を行使したというのだ。
ところが、この大使館攻撃計画について、エスパー国防長官が「決定的な情報は見ていない」と語り、ポンペオ国務長官も「正確な時期や場所はわからない」と述べて、トランプ大統領の発言を否定してしまったのだ。するとトランプ大統領はツイッターで、「(差し迫った脅威があったことは)どうでもよいことだ」と書いてしまった。トランプ大統領が衝動的に行動し、場当たり的に言い訳をしているさまが目に浮かんでくるようだ。
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