自信が持てない「仕事迷子」な大人が激増のワケ 社会人の職場体験という「仕事旅行」の醍醐味

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仕事旅行とインターンシップや研修、ワークショップと最も違うところは、僕は学校や会社、各種研修では得られない「仕事旅行社ならではの学び」があることだと考えている。それは次のようなことだ。

① プロフェッショナルの仕事観や仕事術に触れることで視野を広げ、自分らしい働き方の「軸」を定めること。
② 仕事体験を通じて、ある仕事を支える基礎的な能力を学び、できることの「幅」を広げること。

あらゆる仕事は、「軸」と「幅」で成り立っている。

軸とは、「自分は〇〇がしたい」「△△のようになりたい」という仕事観やキャリア意識。幅とは、「自分は××ができる」という、社会人としての基礎的な力。この軸と幅は、仕事でやりがいを感じるための”土台”や”基盤”のようなもので、パソコンで言うならソフトやアプリを動かすOSに当たる部分である。

(図版:『働くコンパスを手に入れる: 〈仕事旅行社〉式・職業体験のススメ』より)

軸と幅はすべての仕事に必要な基礎なのだが、ここがしっかりデキ上がった状態で社会人になる人はそれほど多くない。

20代後半から30代前半の多くの社会人が、キャリアや会社に対するネガティブな心理から抜け出せない“仕事迷子”になってしまう要因は、その土台のもろさにあるのではないかと思う。

けれど、会社という場所では、仕事のためのスキルを学ぶ数々の研修こそ実施しても、”仕事迷子”からの脱却方法は教えてくれない。働くための土台(OS)は完成しているという前提で、会社は動いているからだ。

だから、そのOS整備をサポートする”体験型カリキュラム”である仕事旅行では、さまざまな職業体験に参加することで、この土台の存在に気づき、社会で長く充実した仕事を続けるための礎をしっかり築いてもらいたいと思っている。

他人と比較することで見えてくる自分の軸

仕事旅行でOS整備ができるのは、仕事旅行ならでの学びに「越境学習」と「経験学習」という2つの側面があるからだ。

「越境学習」から説明しよう。

例えば、「花屋さん」の仕事旅行に参加したとする。1日の旅の中で、参加者は花屋さんの仕事の一部を手伝わせてもらうだけでなく、ホストからさまざまな仕事の話を聞くことになる。その人は「花屋を志した理由」や「好きなこと、得意なこと、苦手なこと」「仕事において大切にしていること」といった仕事観に触れていく。

そうした話を聞くうちに、そのホストの仕事や働き方の根っこにあるキャリア意識、つまり「軸」が見えてくる。他人の「軸」を知ることは、自分の視野を広げることにつながるが、それよりも重要なのは、他人の軸と比較することで自分の軸を認識する「相対化」ができることだ。

「こういう仕事の方向性は自分も向いているな」とか、あるいはその逆で「自分にはできそうもない」でも構わない。比較して相対化することによって、自分の「軸」に気づきやすくなる。例えば、「美しいものへの関心が強い人」や「自分でお店を運営したい人」は、花屋さんとしての「軸」があるということにおのずと気づかされる、というようなことである。結果として、キャリアへの意識が高まり、自分が進むべき方向性を見つけやすくなるのだ。

社会人になってしまうと、日々の仕事に追われて、そうやって自分軸を発見する、あるいは客観視して軌道修正する機会がなかなか得られないもの。「越境学習」である仕事旅行は、その機会を提供することができる。

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