VW「T-Cross」はC-HRやヴェゼルに勝てるか 新顔コンパクトSUVに試乗して感じたこと
T-Crossは、質実剛健で実直なVWらしい実用性の高さも備えている。
例えば後席は、前後14cmのスライド調整ができ、もっとも前へ移動すれば、荷室容積を約1.2倍に増やすことができる。この状態だと足元のゆとりはなくなるが、それでもきちっと座っていられる空間は確保される。ただし、シート自体は、少し座面の長さが不足していると感じた。
また後席は、6:4の比率で背もたれを前方へ倒すことができ、それによって乗車人数や荷物の量に合わせたシートアレンジが可能だ。荷室の床を持ち上げると、スペアタイヤがない分(タイヤ応急修理キットで対応)小物入れとして使うこともできる。小柄な車体ではあるが、合理的な設計で実用性はかなり高い。
運転席のシートはたっぷりとした大きさで、ドイツ車らしい硬めのクッションとともに、体をしっかり支えてくれる。逆に小柄な人には、シートがやや大きすぎるかもしれない。
1.0リッターターボの走りの評価
走り出すと、排気量が1.0リッター以下の小さなエンジンにもかかわらず、ターボチャージャーの過給によって力を補い、1270kgの車両を十分に加速させた。ただ、エンジン回転数が毎分2000回転付近では、力の出方がやや足りない場面もあった。
気になったのは硬い乗り心地で、運転席ではもちろんのこと、後席ではとくに体が弾むほどで、快適とは言えなかった。1st Plusでは扁平率が45%という薄いタイヤが装着されており、路面からの衝撃を吸収しきれないのかもしれない。
彩り豊かなアルミホイールとともに見栄えはよいが、やや扁平すぎる選択だと思われる。今回は試乗できていないもう1台の特別仕様である1stは、60%扁平のタイヤが選ばれているため、乗り心地はだいぶ違うはずだ。
全体的には、最小回転半径が5.1mとコンパクトカーとしては十分な小回り性能も備え、都会での日常的な使い勝手もよいSUVではないかと思う。
ドイツ車は、導入初年度は多少気になる点が残ることがあり、翌年以降になると様変わりするほど改善される場合が多い。1stや1st Plusという特別仕様としての装備の充実などに魅力はあるが、全体的な調和がとれるのを待つのも1つの考え方だろう。
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