2020年代、電車の運転士という職業はなくなる? AIが人間並みになるまでには時間がかかる
ご存じのとおり日本の鉄道依存度は大変高い。世界トップクラスの乗降者数を誇る駅をいくつも擁する都心部では多くの人が行き来し、とくに通勤ラッシュ時には容量オーバーとなる。そんな混雑時でも大幅な遅れがなくスムーズに乗降できるのは、毎日の通勤で利用している、いわば「訓練された」乗客の協力のおかげで成り立っている。
遅延発生時の運転整理については、現在は指令員の職人判断で行っている。今後はAIの助力があることも予想されるが、その過程の中で、AIが予測できない遅れがひとたび発生した場合、混乱を避けたサービスが即時に提供できるかが、1つの課題になりそうだ。
もっとも、そのような懸念を乗り越えるだけの利便性・効果があるからこそ導入を検討しているわけである。「変革は痛みを伴う」とはよくいったもので、まさに2020年代という時代はその改革期とも言えるだろう。
鉄道に優秀な人材が集まらなくなる
AI時代における運転士という職種は、ロボットに代替されている可能性が大変高い職種である。一方、不安視されるのは優秀な人材が育つ土壌が育まれなくなる可能性があることだ。もし20年後のAI体制のために「運転士」という呼称をなくすことが、現時点から入社を考える優秀な人材を減らしてしまうような形につながるのであれば、鉄道業界の将来全体に多大なインパクトを与えてしまいかねない。
「運転士」だけではなく、「パイロット」「税理士」「行政書士」など名だたる職業がなくなってしまうかもしれないという将来では、「プロフェッショナル」という呼び名が名ばかりのものになってしまうことが最も恐るべきことである。
一人ひとりが夢を実現するため、知識の習熟や国家資格取得のモチベーションを持っていると思うが、裏側にはその職業がプロフェッショナルであることと強い関係があるといえる。これらの優秀な人材が、AIに代替できないプロフェッショナルになるべく他業界に流れれば、長期的な業界衰退も考えられる。効率一辺倒の施策は大変危険である。AI化は各所にバランスを保ちながら慎重に進めていくべきだ。
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