相鉄直通、東急の真の狙いは「新横浜アクセス」 JR線直通で一段と期待が高まる

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このように東横線の沿線はどんどんネットワークを拡大させるとともに利用を増やした。途中駅の乗降人員も増えている。東横線利用者は2005年度に1日あたり約107万人だったが最近の2018年度は約124万人で、およそ17万人増加した。JRが横須賀線に武蔵小杉駅を作ったのも、当地の利便性から大規模再開発が急進展したからだ。

東急が目黒線用に新造投入している3020系(撮影:仲井裕一)

そして、この利用増による混雑を吸収するべく東横線を支えたのが目黒線であり、2000年に目黒―武蔵小杉間の路線として誕生、まもなく地下鉄2路線に直通を開始した。2006年に急行運転開始、地下鉄グリーンラインが開業した2008年に日吉延伸と、機能を拡充している。

地下鉄2線で日比谷・大手町・永田町などの地に直結するばかりか、目黒乗り換えでこれまた発展著しい大崎や品川も近い。こうしたアドバンテージから運転本数も増加の一途をたどり、現在、ラッシュ時は東横線に迫る本数(武蔵小杉駅平日上り7時台=東横線23本、目黒線22本、8時台=同24本、20本、9時台=同19本、15本)を運行している。ピーク1時間の乗車率も東横線に匹敵する(2018年度の東横線祐天寺→中目黒間172%、目黒線不動前→目黒間174%)とのこと。

なお、東横線の8両または10両編成に対し目黒線は6両編成で、東横線に比べて距離が短く(東横線24.2km、目黒線11.9km)、日中の利用は東横線が圧倒的なため、1日の利用者数の実数は約39万人と水を開けられている。ただし、2005年は約25万人であったから1.5倍以上の増加で、東横線の約15%増に対して伸び率は大幅に上回っている。

ネットワーク拡大は東急の「戦略的施策」

これらの状況から、相鉄・東急直通線は基本的に目黒線直通が主体でも不都合はない。直通列車は“足が長い”ことから速達性も考慮すると言う。東急においてはもはや、目黒線は東横線、田園都市線に次ぐ第三の主軸路線に育ちつつあるようだ。

となれば、以下は想像だが、朝夕ラッシュ時は相鉄―目黒線方面を主体として現在の急行と結び付け、毎時4本の日中は東横線ダイヤに余裕があるので、目黒線と東横線を半々とする。東横線直通については、かつての日比谷線直通の名残である菊名折り返し列車のスジが活用されるのだろうか――と考える。

『鉄道ジャーナル』2020年2月号(12月21日発売)。特集は「横浜鉄道再編」(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

目黒線については現在、6両編成を8両編成化する準備が着々と進められている。相鉄・東急直通線プロジェクトとは別途の東急電鉄の自社施策であるが、その目的は、相鉄・東急直通線開業後の輸送量増加に対応するためだ。直通線開業前の2022年度上期実施を目指しており、関係する東京メトロ、都営地下鉄、埼玉高速鉄道からも輸送力増強の車両増備や駅の改良が発表されている。

東急電鉄において直通運転による広域ネットワークの形成は、戦略的施策に位置づけて行われている。つまり、横浜方面から東京都心へ向かう人が、地下鉄各線との直通や接続の利便性の高さから東急経由を選択する。都心からは地下鉄の先の路線からも、東急線直通電車があることによって横浜方面を訪れる人が利用する。相鉄・東急直通線にしても、開業すれば都心通勤だけでなく、新幹線を利用する人が各方面から新横浜へと新たに利用する。

「郊外にも都心にもネットワークを広げて必ず東急線を経由するような仕組みとし、その利便性と、街づくりや再開発の相乗効果により沿線の定住人口を増やしてゆく」との確たる狙いがあるのだった。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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