株価に限らず、土地や住宅などの不動産も含めた資産の価格は市場の需給関係だけで決まっているように見える。理論価格からの大幅な乖離がかなり長い期間にわたって続くことも珍しくない。しかし理論価格が教えていることは、資産価格は本質的には将来の収入や利益を先取りしたものであるということだ。
将来もこれまでよりも低い金利が続くと皆が考えるようになれば、企業収益の成長経路が変わらなくても資産価格は上昇する。これは将来の利益は、金利が低いほど大きな現在価値に転換されるからだ。低金利が続くという予想が外れれば、現在の価格は過大評価だったことになるので、資産価格は大きく下落することになる。
自社株買いによる株価下支えも無制限に続けられるわけではないので、いずれは限界に達して株価の下落が起こってしまう。人為的に株価を維持して、経済を刺激しようとするのには無理がある。
財政・金融政策は構造的な問題を解決しない
政府や金融当局が財政・金融政策を適切に運用すれば、景気を後退させることなく経済成長を続けることができると考えるのは危険だ。財政・金融政策のファインチューニングによって経済をコントロールして失業の発生を回避しようという経済政策は、1970年代以降のスタグフレーションの遠因となった。
財政・金融政策を使ったマクロ経済政策は最悪の事態を回避することを重視し、ある程度の成功で満足すべきものではないか。最善の経済状態を実現しようと欲張ると、いずれ大きな落ち込みを生み出してしまい、かえって国民を苦しめる原因になりかねない。
日本をはじめ先進諸国の経済が低迷から抜け出せないのは、財政・金融政策の運用の問題ではない。所得や資産の偏在などの構造的な問題が原因で、それを解決することが必要だと考える。財政・金融政策をいくら繰り出しても問題は改善せず、ひずみが貯まるだけに終わるのではないだろうか。
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