日産の「次世代EV」は反転攻勢の切り札となるか ブランド再建へ先進技術を前面に押し出す

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アリアと並んで公開された軽自動車クラスのEV「IMk」も同様だ。ゴーン元会長がトップだった時代に策定された中期経営計画では、2022年度までに軽のEVを日本市場に投入する方針が掲げられており、IMkも近い将来の商品化を見据えたコンセプトカーであることは間違いない。

日産の命運を握る次世代EV

日産は今、屋台骨だった北米市場での低迷と新興国投資の失敗などが積み重なり、業績不振に陥っている。2020年3月期の営業利益見通しは前期比27%減の2300億円としているが、第1四半期決算での営業利益は前年同期比98%減というさんざんな結果で、通期見通しの下方修正の可能性もささやかれる。

2018年11月にゴーン元会長が逮捕されて以降、ブランドイメージの悪化による影響が顕著に表れているのは国内市場だ。国内の全体需要は比較的堅調にもかかわらず、日産は2019年1~9月のうち7カ月で前年割れした。

ゴーン体制下では国内市場は成長性が低いと位置づけられ、新車開発・投入が抑制されてきたことも影を落とす。北米では、過度な値引き販売を繰り返してきたことによるブランド力低下が販売低迷の一因になっているなど、ゴーン経営の後遺症に苦しんでいる。

今年5月以降に2回に分けて公表された経営再建策では、生産能力の縮小や従業員1万2500人削減などのリストラ策に併せて、「ニッサン インテリジェント モビリティー」と銘打った先進技術群を搭載した新型車の投入を柱に据えた。2022年度までに20以上の新型車を投入し、すべての中核モデルを刷新する計画で、アリアやIMkも含まれるとみられる。

日産のEVコンセプトカー「ニッサン IMk」(撮影:大澤誠)

電動車では、EVと独自のハイブリッドシステム「e-POWER」を軸に、各地域での電動化比率を30~50%に高めていく構えだ。日産は2010年に世界初の量産EVである初代リーフを世に送り出した。2017年には2代目を発売、世界累計43万台を販売して、黎明期のEV市場を牽引してきた。

ただ、近年では自動車メーカー各社がEVのラインナップを拡充してきており、日産の存在感は相対的に薄まりつつあるのも事実。高速道路での手放し運転を実現した先進運転支援システム「プロパイロット2.0」の搭載車種拡大も含め、日産は先進技術を金看板に掲げて突き進むしかない。一連の騒動で傷ついたブランドを立て直す意味でも、持ちうる技術を詰め込んだアリアなどの次世代EVは、苦しむ日産の命運を握っているといっても過言ではない。

岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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