血液クレンジング騒動で見えた広告規制の限界

SNSの「医療ステマ投稿」は野放し状態

医療機関が広告をする場合、医療法に基づいた「医療広告ガイドライン」に従う必要がある。このガイドラインは、一般的な商品やサービスの広告に対する規制と比較しても厳しい。近年は美容医療の被害が急増したことを受け、2017年には医療法が改正され、ホームページにも広告規制が及ぶことになった。

医療機関のホームページに掲載される血液クレンジングの説明。血の色の術前術後写真も(写真:ロイ点滴クリニックのホームページより)

厚生労働省の担当課によると、効果が検証されていない治療について「がんに効果がある」といった書き方をしている場合、指導の対象になる可能性があるという。ガイドラインでは虚偽広告や誇大広告、「著名人も〇〇医師を推薦しています」といった、他の医療機関よりも優良であると示す比較優良広告を禁止している。

だがガイドラインには、ホームページ上に問い合わせ先を明記し、自由診療の場合、治療の内容や費用、リスクや副作用に関する情報提供を明確に行っていれば、掲載してもよい項目が増える「限定解除」という仕組みがある。そのため、実際に禁止されている広告内容の線引きはあいまいだ。

また、実効的な罰則が実施されることはきわめてまれで、取り締まりの実権がない、いうなれば「お飾り」に近い状態だ。広告規制に詳しい丸の内ソレイユ法律事務所の成眞海氏によると、「2017年の医療法改正以来、美容医療などを中心に指導の件数は増えているが、行政処分や刑事処罰を受けた事例は、まだ聞いたことがない」という。

厚労省が民間業務委託も捜査権はなし

ネット上の違法医療広告の取り締まりは、2017年8月から厚生労働省が民間に業務委託している「医療機関ネットパトロール」が行っている。通報などにより違法な広告を発見し、医療機関に通達を行うが、それでも改善が見られない場合は、個別案件ごとに自治体の保健所が指導を行うという仕組みだ。

ところが、規定上は罰則に当たるものであっても、保健所に警察のような捜査権がないため、手詰まりになってしまう。

今回の炎上のきっかけとなったSNSの投稿に目を向けても、インフルエンサーによる投稿が一般の投稿か、それとも消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をする「ステマ(ステルスマーケティング)」なのかどうか判別することは非常に難しい。

前述の渡井会長も「美容系に多いが、規定の治療法を守らない医師が適切な説明をせず、内容をわかっていない芸能人が『ステマ』的な投稿をしていることを問題視している」と懸念を示す。

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