オンワード「600店撤退」に映る大量閉店の難題 成長性には見切りをつけ収益性に舵切る戦略

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そこで仮に『23区』と『五大陸』だけ残すといった具合に2店舗だけ閉鎖したらどうかということになりますが、ブランド別に店舗を残しても店舗数に比例して売上が減るだけです。ですから本当は店舗を減らすことと並行して販売ブランドの統合も必要になってくるのです。

日産の場合は統合した店舗で、過去に別々の専売車種を併売できるようになりました。ただ店舗を減らすだけでなく残した店舗で売ることができる商品を増やすのが望ましいのですが、アパレルはそもそもお店とブランドが一体化しているのでそれが難しい。『五大陸』のお店で『J.PRESS』のポロシャツを扱うことを考えて見ると、ちょっとした無理がある。ここをどう乗り越えるのかが難しいのです。

シェアや存在感の低下は避けられない

3つめに大量閉店で身の丈にあった店舗網サイズにすることで収益性は確保できるようになるのですが、その反面、規模としてはその後、長期にわたってその縮小された店舗網サイズに売り上げや市場シェア、存在感がとどまってしまうというマイナスの影響がでてしまいます。日産の場合も収益性は高まった一方で、国内の月次市場シェアは徐々に減少して、直近では10%台の前半、10%に近い数字へと張り付いていますし、ランキングではかつての安定した2位ではない、2位と3位を毎月行ったりきたりする状況です。

結局のところ収益性と成長性はトレードオフ(二律背反)の関係にあって、大量閉店を断行するということは成長性に見切りをつけて収益性におおきく舵を切るということなので、これは当然の結果かもしれません。

この大量閉店の計画を発表した直後、10月7日のオンワードホールディングスの株価は前日比で4.9%の上昇となりました。資本市場はオンワードの事業計画について高い好感度をもって迎えたということになります。

でもその好感がこの先も続くかどうかは、ここまで述べた3つの事柄、つまり「摩擦に耐えて断行しきれるのかどうか」「ブランド毎の売上減を最小にとどめることができるかどうか」そして「収益回復後に縮小均衡に陥らないかどうか」にかかっています。資本市場は冷徹にこの3点を見続けていて、オンワードに投資をするかどうかを判断していくはずなのです。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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