オンワード「600店撤退」に映る大量閉店の難題 成長性には見切りをつけ収益性に舵切る戦略
日産の販売会社にはメーカー直系や地場資本もあるので、すべてがメーカーである日産の意向で再編や店舗閉鎖できることではありません。とはいえ、結果としては日産の狙いに沿ってピークには3000カ所を超えていた日産の系列販売店は、現在2000店強まで減るなど、結果として大量閉店が進みました。
日産の収益はその後、改善していきます。車種も減らし、取引先の部品メーカーの数も半分近く減らすなど、生産側も日産の実際の背丈にあった大きさに縮小させていったことも大きな要素ですが、大量閉店につながった店舗再編によって販売チャネル規模を修正し、国内流通のコストが適正化したことは日産の収益向上に大きく寄与したわけです。
このように企業経営に劇的な効果をもたらすのですが、企業経営者は大量閉店をあまりやりたがりません。これはオンワードにとってもこれからの課題ということになるのですが、大量閉店には3つのリスクが存在すると私は考えています。
現場との摩擦に向き合うエネルギーの消耗
ひとつめはこれが何といっても大きいのですが、閉店にともなう現場との摩擦に向き合うことが非常に経営者のエネルギーを消耗させるのです。今回の例で想定されるのは地方の百貨店の抵抗です。なにしろこれまで何十年もかけて培ってきた信頼関係と人間関係があり、実際にお互いに助け合ってきた歴史があるわけです。
そしてその百貨店からオンワードが撤退することで百貨店そのものが衰退する危険性がある。その背景事情を考えれば、オンワードが閉店を計画する百貨店側は全力でそれを止めにくるはずです。同時にオンワード側の担当者も閉店や従業員の首切りには抵抗するでしょう。そしてその数が全部で600店舗ということですからそれをやり遂げるエネルギーは大変なものになるはずです。
ふたつめに店舗をどう減らしていくのかの具体的な計画において、ブランドと店舗の縮小計画を連動させるのが非常に難しい。オンワードの店舗といってもそれは女性向けの『23区』『組曲』、男性向けの『J.PRESS』『五大陸』といった具合にブランドごとに細分化されています。たとえば地方都市の百貨店にこの4ブランドの店舗があったとして、4店舗とも閉鎖してしまうとその都市での売上はゼロになってしまいます。
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