シンクタンクの裏側は地道な業務の積み重ねだ

プログラムオフィサーの編集力が支えている

船橋:政策広報の仕事でいちばん印象に残っていることを教えてください。

今井:結局、私たちの案は採用されずに負けちゃったんですけど、キャンペーンとしては、臓器移植法改正が印象に残っています。

船橋:そのキャンペーンではどんな苦労があったのですか。

今井:もともとは、生命倫理についてじっくり考えてみようという、ゴールの見えない長いプロジェクトだったんです。ところが、その最中に、臓器移植法を改正して、子どもも含めて適用範囲を広げようという動きが出てきて慌ただしくなりました。「苦しんでいる子どもを救うんだ」という大義に対して、生命倫理の観点から「ちょっと待った」というのは、なかなか厳しいキャンペーンでした。討論番組のプロデューサーや出演者の方に資料を送ったり、広報担当者や研究者が手分けして回ったりしました。

そのとき、このキャンペーンを主導した女性研究員の方は、後に参議院議員になりました。

リボルビングドアのアリーナに

船橋:ほかにも政治家になったケースはあったのですか。

今井:はい。当時は、何人かいらしたと思います。後に、市長や副知事になった方もいました。

船橋:シンクタンクはそのような場であっていいという考えがあった。

今井:当時はそういう考えもあったと思います。シンクタンクは霞が関だけじゃない、というのが民間の独立系シンクタンクを設立する動機で、政策人材のリボルディング・ドアのアリーナになることを目指しているわけだから、シンクタンクで力を蓄えて選挙に出たり、失敗した人が再起を期すための一時避難所だったり、そういうポジションがあってもいいという考えだったと思います。

船橋:すばらしい発想ですね。

今井:志のある人を受け入れるという発想だと思います。日本では、企業でも役所でもそうですが、選挙に出る人には辞めてもらうというのが一般的ですが、それでいいのだろうかという議論もしていました。政策に志のある人が政治家を目指すハードルを高くしてしまって、政治が一部のプロの政治家たちに独占されている状況は、これからは望ましくない。もう少し、流動的にすべきだという考えがあったのだろうと思います。

(後編に続く)

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