トヨタに逆風?中国「HV優遇」転換で起きる懸念 政府が軌道修正、HV先行の日系企業の行方

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3つ目はドイツ系メーカーの脅威だ。先行する日系メーカーのフルHVに対し、VWなど独系5社は2011年に48VのマイルドHVシステム(電源電圧を48ボルトに引き上げたモーター・電池パックなどの組み合わせ)を新機軸として打ち出し、ボッシュ、コンチネンタルなど大手サプライヤーも巻き込んで部品規格を共通化させようとしている。

日系メーカーのフルHVシステムに比べ、48Vシステムを搭載するマイルドHVは、燃費改善効果でフルHVの7割程度だが、生産コストではその3割に過ぎない。

コンチネンタルは2018年、地場電池メーカーと合弁で48Vシステムの開発・生産に取り組んでおり、ボッシュも同年末に中国・無錫で48V関連電池の生産を開始した。燃費規制に苦しむ地場自動車メーカーにとっては、構造が複雑でかつ開発コストも高いフルHVへの新規参入に勝算を見出せないため、構造がシンプルなマイルドHVへの期待が次第に高まる。今後ドイツ系サプライヤーが中国で48Vシステムを大量に供給すれば、マイルドHVは日系HVの競合相手となる。

最後に笑うのは中国政府とドイツメーカーか

EVとPHVの販売支援を目的とした中国政府の補助金支給額は、2013年から2018年の6年間で約3兆5000億円を上回った。一方、国の財政負担を憂慮した中国政府は、段階的に補助金を引き下げ、来年末に支給を打ち切る方針を明らかにした。

今後NEVクレジットの売買益がNEV補助金支給制度に代り乗用車メーカーの省エネ対応およびNEVシフトを促すインセンティブになると期待される。

一方、多くの地場メーカーがEV生産に参入したことにより、大量な余剰NEVクレジットが発生し、NEVクレジット単価は2019年では1万円程度に過ぎない。このままいくと、NEVクレジットの魅力が薄くなり、EVメーカーの収益悪化も懸念される。

上記の修正案がNEVクレジットの獲得条件を引き上げたことにより、NEVクレジット単価は2020年に3万円に達すると見込まれる(中国汽車技術研究中心)。こうなると、日系HVの商機は限定的だ。中国のNEV政策の修正や「低燃費車」優遇策で笑うのは、結局は中国政府とドイツメーカーかもしれない。

湯 進 みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員、上海工程技術大学客員教授

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タン ジン / Tang Jin

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、日本・中国自動車業界の知見を活用した日系自動車関連の中国事業を支援。現場主義を掲げる産業エコノミストとして中国自動車産業の生の情報を継続的に発信。中央大学兼任教員、専修大学客員研究員を歴任。『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など著書・論文多数。(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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