親による「誘拐」が容認されている日本の異常 なぜ離婚後の共同親権が認められないのか
片親が家庭内暴力を主張するケースもある。アーティストのミナコさんも元パートナーのそうした主張に苦しんできた1人だ。「前夫は、私が子どもたちに薬を与えすぎる、と言って私を子どもたちから引き離しました。彼はそう主張して医者からの証明を取ってきたのです。日本は家庭内暴力の虚偽の主張について適切に対応ができていません」と、彼女は話す。
民法第766条では、離婚後の監護を「子の利益」に基づいて決めることが要請されているが、「子どもの立場から見れば、共同親権が最良のシステムだ」と、専修大学の早川眞一郎教授は話す。ウェストミンスター大学のマリリン・フリーマン教授が、子どもの時に片親を奪われた成人34人を調べたところ、多くが「消えない不安感」や「生きているというよりも生き残っている」という気持ち、「繰り返される自殺未遂」といったトラウマを抱えていることがわかった。こうした研究は日本ではなされていない。
マクロン大統領も連れ去りを嫌悪している
だが、変化は海外からの圧力によってもたらされるかもしれない。国籍や背景が異なる人々の離婚の増加によって単独親権システムが世界中の激しい非難にさらされている。日本と海外の父親が提携し、7月末には、国際連合人権理事会にこのシステムが子どもの権利条約に違反していると訴える予定だ。
6月末のG20でも、イタリアのジュゼッペ・コンテ首相が安倍晋三首相に子の連れ去りを巡る状況について不満を述べた。同首相は6月半ば、6歳の息子と4歳の娘を日本人妻によって連れ去られたイタリア人のトッマーソ・ペリーナ氏と電話で16分間話した。彼は2人の子どもたちに面会できない状態だ。「首相の私すら問題を解決できない」と、コンテ首相も頭を抱えている。
マクロン大統領も連れ去り問題には嫌悪感を持っている。6月26日に3人のフランス人の父親と対面した後、大統領は同日の夕食で安倍晋三・昭恵夫妻にこの問題を持ち掛けた。「到底受け入れられない、嘆かわしい状況がある。この状況に立たされているフランス人がいるのを放っておけない。彼らの子どもの基本的な権利と彼らの親としての権利は守られなければならない」とマクロン大統領は翌日、明らかに心を動かされた様子で語った。
日本の外交上の課題の1つは、北朝鮮による日本人の子どもの誘拐だ。それは確かに“普通の”誘拐よりおぞましい。「だが、フランスの子どもたちが日本で誘拐され、それが罰せられないままで、どうやって日本はわれわれのサポートを得ようというのか」と、あるフランス人外交官は話す。
「私は日本を守るためにここにいる。ドナルド・トランプ大統領が日本とアメリカの関係は一方的だと言っているけれど、それは正しい」と、米軍基地で働くマイク・ブレザー氏は言う。彼は妻との離婚手続き中で、14歳の息子に面会することができない。8歳の娘とは、かなり限られた形でまだ面会できるものの、離婚が成立してしまえば娘との面会も打ち切られるのではないかと不安に思っている。
「アメリカには、昔は奴隷制度があった。でも日本の単独親権システムはある意味でそれよりも悪い。親と子という、最も基本的な人間関係を壊すことを許しているからだ」
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