反社会勢力への「闇営業」は法律的に何が問題か 5つのポイントに沿って弁護士が徹底解説
吉本興業とワタナベエンターテインメント(以下、「所属事務所」)に所属するお笑い芸人が、事務所を通さずに特殊詐欺グループとされる反社会勢力の会合に出席し、金銭を受領したとして、所属芸人合わせて13人が謹慎処分にされました。
法的には5つのポイントが主な焦点に
この一件は法律的に見て、いくつかの問題がある可能性があります。5つのポイントに沿って整理します。
(1)組織犯罪処罰法違反(ただし、本件では時効が問題に)
組織犯罪処罰法11条では「情を知って、犯罪収益等を収受した者は、3年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と規定されています。昨今では違法行為を行い集めた、金銭の資金洗浄(マネーロンダリング)を防ぐなどの観点から刑事罰が設けられています。
「情を知って」という言葉は、前提となる犯罪の行為状況および収受に係る財産がその前提となる犯罪に由来することの認識を意味し、その行為が違法であることの認識までも求めているものとは解されていません(大阪地判平成19年2月7日判タ1266号331頁)。
本件では、特殊詐欺グループの会合へ出席し、芸(歌・司会・漫談等)を披露したことによる対価として、そのグループから金銭が支払われたとのことです。そのグループは、特殊詐欺(刑法246条)によって金銭を獲得したと考えられるため、そうであればこの支払いの原資は「犯罪収益」に当たります。
問題となっているお笑い芸人は、「特殊詐欺グループであることを知らなかった」等と述べておりますが、仮に本件の会合で自分たちへの対価が詐欺によって違法に獲得されたものであることを知っていた、または知り得た(未必的認識)のであれば、組織犯罪処罰法11条違反が成立すると考えられます。
もっとも、本件の会合は5年前に行われたもので、その金銭の授受がその前後間もない頃に行われたのであれば、時効が成立しており、罪に問われることはありません(社会的非難がなされることとは別問題です)。
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