日産株主総会、「ルノー棄権」で手詰まりの懸念 総会混乱は日産のマネジメント不足に原因

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――2号議案が成立しなかった場合、それを前提としている3号議案(取締役11人の選任)の扱いはどうなりますか。

監査役会設置会社から指名委員会等設置会社に移行すると、自動的に全取締役が任期満了になるという規定が会社法にある。2号議案が成立すると、監査役も退任となり、取締役は任期満了になるので、新しい取締役を選ぶという流れになる。

しかし、定款変更の2号議案が不成立となると、監査役会設置会社のままになる。退任する予定だった監査役4人は続投することになり、日産としては会社提案を修正して、「監査役会設置会社としての取締役候補11人を提案する」ことが考えられる。ルノーが賛成すれば可決する可能性は高い。ただし、「指名委員会等設置会社への移行を前提としての取締役選任議案だったはずであり、そうでなければ無効だ」と一般株主から訴えられるリスクもある。

いずれにしろ、日産の経営陣にとっては厳しい状況となる。

日産への株主権行使はルノー取締役会が決めること

――日産のガバナンス改革の過程にはルノーの関係者も入って議論をし、指名委員会等設置会社への移行を決議した日産取締役会ではルノーのジャンドミニク・スナール会長も賛成しました。

有識者委員会で議論することも大事だが、株主重視というガバナンスの原則からして、大株主の賛同こそが何よりも重要だ。厳密に言えば、ルノーとして日産に対する株主権行使は重要な問題であり、どのように行使するかはルノーの取締役会が決めるべきこと。日産の取締役会にルノー出身の取締役が出席して賛成しているので、ルノーの取締役会も賛成しているはずだという論は通りにくい。

――現状では、日産は手詰まりのように見えます。今後、どのように行動すべきなのでしょうか。

日産は早急にルノーとのトップ会談を行って、ガバナンス改善のために指名委員会等設置会社への移行が必要だという点で基本合意を得て、各委員会の人選を詰めることが求められる。一般株主に迷惑をかけることは最大限の努力で避けるべきだし、それが多くの株主を擁する上場企業のあり方だ。

岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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