テレビ番組の「個人視聴率」が語られない不毛 世帯視聴率は消滅、計測は「個人」にシフト
そしてネットが登場した今、ターゲットを絞る要求がさらに強まった。すると世帯視聴率という指標の存在意義がなくなってきた。だったら「視聴率」も世帯ではなくこれまで性年齢別に出していた個人視聴率の全体(個人全体と呼ぶ)を基準にすればいい、CM取引にも個人全体を使おう、ということになったのだ。世帯と個人で視聴率はまったく異なる。それを10世帯のモデルで見てもらおう。
ある番組を図1のように10世帯のうち5世帯が見ていれば世帯視聴率は50%、だが見ている人数は25人のうち7人なので、個人視聴率は28%になる。
ところが図2では世帯視聴率は同じ50%だが、個人視聴率は44%になる。2つの指標はまったく違うことがわかるだろう。それに「日本人の何人がこの番組を見たか」を知る際に使うとしたら個人視聴率だということもわかると思う。
これまでサッカーの大きな試合などで「視聴率は40%!」と聞くとつい日本人の4割が見たのか、じゃあ何千万人……などと計算しがちだったが、それは間違いだ。何人が見たかを知りたいなら、個人視聴率のほうがわからないと何の意味もない。
つまり、世帯視聴率を見ても実は番組の評価とは言えなくなっていたのだ。実態に近いのは個人視聴率だ。それなのに、なぜか未だに世帯視聴率の数字が世の中に出ていっているのが私は不思議でならない。
きわめて不健全な状態ではないだろうか。近く消滅する世帯視聴率で番組をディスっても、何にも意味がないのだ。放送業界として、世帯視聴率は無意味な指標になることをアナウンスすべきではないだろうか。
局による温度差の不思議
だがもっと不思議なのは、個人視聴率を放送局が重視するのかどうかが不明快なことだ。関東では取引に使われているのだから在京キー局は個人視聴率を基準にするよう切り替えるはずだが、どうやら局により温度差があるようだ。はたから見ていて不思議で仕方ない。
日本テレビはすでに社内指標を個人視聴率に切り替えている。別の局では、個人視聴率をある年齢層で区切って社内指標としているらしい。それはそれで、局としての考え方、戦略としてありだろう。
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