3度目の「韓流ブーム」を牽引する若者の関心事 政治への関心は薄いがグルメに興味津々

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韓国は、ひとたびブームが起きると官民あげて右へ倣えをすることが多いが、当時の韓国芸能界は第2、第3の「ヨン様」をもくろみ、ドラマや映画を日本に輸出した。しかし、その期待ほどには二番煎じ的ドラマが爆発的なヒットにつながることはなかった。

そして、ドラマ主体の第1次韓流ブームは収束したが、K-POPが第2次韓流ブームを引き起こすことになる。音楽業界がBoA(ボア)、東方神起、BIGBANG(ビッグバン)、少女時代、KARA(カラ)など韓国のアイドル歌手を日本に売り込み、ブームにつながった。

韓国の音楽業界が、国内で投資金を回収することは難しい。文化体育観光部から音楽振興予算を得た芸能事務所は、さらに“輸出”を強化する。「冬ソナ」ブーム時に8600万ドルだった韓国のコンテンツ輸出額は、3億1300万ドルまで成長し、その80%を日本に依存した。

芸能事務所は次々とアイドルグループを誕生させて、アジアやアメリカにも輸出したが、2012年頃には供給過多となり、陰りを見せはじめる。同じようなアイドルグループが数多く複製され、新鮮さが失われたのだ。この年ヒットしたK-POPはPSY(サイ)の「江南スタイル」くらいしかない。

そして、日本の韓流ブームも「江南スタイル」を最後に勢いをなくす。李明博大統領が竹島に上陸して、天皇への謝罪要求を行った影響も大きい。日本で激しい嫌韓・反韓世論が巻き起こり、韓流関連の店舗は次々と閉店に追い込まれた。

韓国食ブームを牽引する10代から20代

韓国ドラマやK-POPは下火になったが、近年、韓国グルメが浮上した。定番とされていた焼肉やキムチなどではなく、韓国で人気が出始めた料理がリアルタイムで広がりはじめたのだ。

鶏肉と野菜を甘辛い味つけで炒めて、チーズをトッピングしたチーズタッカルビなど新しいメニューが人気となり、韓国料理店が集まる新大久保などで、多くの日本人でにぎわうようになる。韓流ブームが終わって下落していた新大久保の家賃も上昇の兆しを見せている。

韓国食ブームを牽引しているのは、主に10代から20代の若い世代である。数年前まで中国人が占領していたソウルの繁華街・明洞は日本人であふれかえり、日本のテレビや雑誌で紹介された飲食店など、韓国人客より日本人客のほうが多い店すらある。

第1次韓流ブームは、30代以上の女性が牽引した。韓国は日本で流行した後、2015年から20年遅れてブームになるコンテンツが少なくない。第1次韓流ブームの15年前の日本はバブルの真っただ中で、多くのアイドルがテレビに登場した時代でもある。

スターがいない“アイドル冬の時代”を経て、冬のソナタが放映されるとバブル期に学生時代を過ごした女性が飛びついた。K-POPが登場するとスター性のあるアイドルを求める世代が韓流ドラマからK-POPに移行する。

第1次・第2次韓流ブームを牽引したのは30代以上で、政治に関心が高い世代でもあり、ブームは政治情勢に作用される。一方、新たな韓流ファンは、第1次韓流ブームを牽引した祖母・母親世代の影響を受けながら成長した世代で、政治への関心が薄い世代でもある。

強制徴用をめぐる判決や日韓合意に基づく和解・癒やし財団の解散、レーダー照射問題など政治的な対立が続くなか、日本と韓国の往来は1000万人を突破した。政治的な葛藤と文化交流は別の問題と捉える日本人が増えていることが往来増加と第3次韓流ブームの背景にあるが、日本バッシング一辺倒だった韓国マスコミが、日本叩きを抑制するようになった論調の変化もプラスに作用しているかもしれない。

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

世界のニュースを独自の切り口で伝える週刊誌『ニューズウィーク日本版』は毎週火曜日発売、そのオフィシャルサイトである「ニューズウィーク日本版サイト」は毎日、国際ニュースとビジネス・カルチャー情報を発信している。CCCメディアハウスが運営。

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