「半沢直樹」の続編決定に7年もかかった意味 秀逸な物語だがさらなる進化も問われる

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また、堺さんは「リーガルハイ」の続編に出演する際、「息の長い作品に参加できることは、役者にとって大きな喜び」とコメントしたように、必ずしもシリーズ作を避けているわけではありません。ただ、完成披露試写会では一転して、「マンネリ気味で現場にいい空気が流れていない」と話す一幕もありました。会場を盛り上げるブラックジョークの意味があったにしろ、まったく感じていなければ出ない言葉だけに、「やはり俳優の醍醐味は続編ではないと感じているのだろう」とみなされるようになっていたのです。

成功した第1弾の熱量を再び持てるか

堺さんに限らず俳優は、さまざまな人物を演じることが仕事であり、醍醐味そのもの。ある役柄を立て続けに演じることは、幸せな部分こそあれ、仕事の幅を狭め、醍醐味を減らし、技量の進歩を止めかねない上に、視聴者に役柄を自分と同一視されかねないリスキーなものです。

「それを望んでいる視聴者やスタッフがいる」「拒否するのは原作者を含めて多くの人々に失礼」という配慮から公の場でコメントすることはありませんが、私が直接会って尋ねた主演クラスの俳優たちは、続編に出演することのジレンマを隠そうとしませんでした。

その点、役柄と自分を同一視されることを承知でシリーズ作に出演し続けている「相棒」(テレビ朝日系)の水谷豊さん、「科捜研の女」(テレビ朝日系)の沢口靖子さん、「ドクターX ~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)の米倉涼子さんは、例外中の例外。ただ、多くのファンを喜ばせている反面、他の作品に出演しづらくなっているのも事実であり、いかに覚悟をもって演じ続けているかがうかがえます。もちろん両者に俳優としての優劣はなく、「活動スタンスが異なる」というだけのことにすぎません。

続編制作にあたる際、モチベーションの点でネックになるのは、俳優だけではなく、プロデューサー、演出家、脚本家などのスタッフも同様。よほどの大作でない限り、「続編ありき」で制作する連ドラはほとんどなく、全力投球で挑むことが多いため、「第1弾の熱量を再び持てるのか?」「あのときを超えるのは難しいのではないか?」という自問自答を余儀なくされるのです。

実際、私は民放各局のプロデューサーや、連ドラの脚本家に会うと必ず、「『〇〇〇』の続編はありますか?」と尋ねるようにしていますが、「やろうと思っても第1弾を超えられない」と難色を示すか、「視聴者と局内の声に押されてやるしかなかった」という発言をする人がほとんど。「作り手たちは、それくらい1本の作品に賭けている」ということなのです。

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