福島除染に巣喰う、ホームレス取引と反社勢力

暴力団関係者の存在

そうした大手企業が除染現場などの状況を細かく把握できているかと言えば、現実はそうではない。何層もの下請け契約が介在しているため、末端に行けば行くほど実態は不透明になり、大手建設会社が直接に個々の仕事に関与できる状況になっていないためだ。

公共工事に詳しい法政大学教授で弁護士の五十嵐敬喜は、菅直人政権で内閣官房参与として初期の災害対応に奔走した。その経験をふまえ、除染作業のためにあわてて企業をかき集めた当初の経緯は、事態の緊急性を考えれば理解できる、という。しかし、今の段階では、不正入札など現場における悪質な行為を防ぐために、政府自らが監視を強化する必要があると指摘する。

「公共事業で(法務局)登録していない業者は絶対にだめだ。税金を使っているので、使い道をはっきりするということが必要」と五十嵐は言う。「確かに除染には緊急性がある。しかし、多くの下請けがあって中間搾取されているのは大問題。それはそれで監視すべきだ」。

先見えない除染事業

2011年3月の東日本大震災で東京電力<9501.T>・福島第1原子力発電所が破壊され、福島を中心に深刻な放射能汚染が発生してから3年近くが過ぎようとしている。「福島再生にすべての責任を負う」と宣言した安倍晋三首相は、復興加速化に向け国費主導の姿勢を鮮明にし、被災者帰還の前提となる除染関連事業には廃棄物の中間貯蔵施設の建設費用を含む4900億円を確保するなど対応を強化する構えだ。

しかし、深刻な労働者不足や不当雇用に苛まれる除染作業が今後も順調に成果をあげるかどうかは未知数だ。環境省は昨年12月26日、もっとも汚染が深刻な地域での除染終了までには、2014年3月を目標にした当初の計画よりも2─3年は長くかかるだろうとの見通しを発表した。これらの地域からの避難生活を余儀なくされている多くの人々にとって、かつての生活を取り戻せる日はまだ近づいてはいない。

(文中、敬称略。年齢は取材当時のまま)

(取材/執筆:斎藤真理、Antoni Slodkowski, Kevin Krolicki、取材協力: ElenaJohansson, 河野芳生、松平陽子、井上ふみか、Ruairidh Villar, Sophie Knight、編集:北松克朗)

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