内定取り消しも頷ける、日本綜合地所の厳しい経営の実情
13日の内定者取り消し対象者53名への説明会の席で、日本綜合地所の西丸誠社長は「幸せに出来る状況ではない」として内定取り消しを謝罪したと言われる。内定者の想定初任給は21万円。1年分としても全員で1.3億円強。この程度の資金が払えないとはとても思えないが、実は同社の資金繰りが厳しい状況に入っていることも事実だ。
同社は会社設立から15年と比較的若い企業だが、昨年の年間販売戸数は首都圏で2位(不動産経済研究所調べ)と大手デベロッパーに成長。それだけに拡大路線を走ってきており、棚卸資産と有利子負債の拡大が並行してきた。2008年3月末の自己資本比率は15.2%。棚卸資産は1600億円。特に棚卸資産は08年3月末の1461億円から139億円増えているが、棚卸資産評価損はこの9月末では5億円とわづかだ。
売上高で日本綜合地所の3倍になる大京の場合、棚卸資産は08年3月末の3496億円から3254億円に減少。9月末には323億円の同評価損を計上しており、業界関係者の中には日本綜合地所の「評価損の出し方が甘いのではないか」との指摘も出ていた。
この点に関して、同社のIR担当者は「値引きによって粗利部分が赤字になる場合だけを評価損の対象にしており、9月末段階では影響が少なかった」と言う。しかし、10月以降、マンション市況が一段と悪化し、各社の値引き販売が増えてきたことから俄かに、資金繰り懸念が台頭してきた。
このため、同社は11月7日に業績修正した段階で、無担保社債の償還資金及び運転資金のため、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、横浜銀行の取引先4行から約168億円の資金を調達。金融面での支援態勢の存在を印象付けた。同時に、当分用地仕入れを停止して棚卸資産を圧縮することや11年3月期までに有利子負債を1000億円削減することを柱とした中期経営計画も発表した。が、9月末段階で1年以内返済予定の長短借入金は723億円あり、逐次約定の返済期日が到来する。
現行のマンション販売状況からすると、依然として資金繰りは厳しい状態が続いているわけだ。同社としては、物件売却による資金回収を急ぐ方針だが、これは当然業績への影響のつながる。マンション不況の底入れ時期が見えないだけに、あらゆる手段を取らざるを得ないというのが実情のようだ。
(日暮 良一)
《東洋経済・最新業績予想》
(百万円) 売 上 営業利益 経常利益 当期利益
連本2008.03 118,933 13,799 10,565 4,646
連本2009.03予 110,000 4,000 350 60
連本2010.03予 105,000 3,800 100 0
連中2008.09 44,735 2,417 476 -27
連中2009.09予 43,000 2,300 400 -50
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1株益¥ 1株配¥
連本2008.03 135.6 60
連本2009.03予 1.9 0
連本2010.03予 0.0 0
連中2008.09 -0.9 0
連中2009.09予 -1.6 0
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