「フランス第2の都市」と日本の意外な深い縁 リヨンが日本に猛アピールする理由
それだけに、リヨンの行政当局の関係者らはPRなどに余念がない。なかでも企業誘致に向けた広報・宣伝活動には積極的だ。企業進出の支援などを行うリヨン地方経済開発公社(ADERLY)には日本人職員も勤務し、日系企業に秋波を送る。
リヨンが直接投資の取り込みに熱心なのは「フランスきっての産業都市」(ADERLY理事のジャン=シャルル・フォディス氏)という自負があるからだ。19世紀に絹織物の中心として発展を遂げたことが契機となり、今では化学、医薬品、デジタル関連の企業や研究機関などの大規模な集積が形成されている。絹織物には染色が必要だったことで、染料を作る化学産業が生まれ、その技術はさらに医薬品、自動車などへ転用された。フォディス氏は「リヨンには戦略的に重要なセクターがいくつもある」と胸を張る。
「映画の父」として歴史に名を残すリュミエール兄弟もリヨン出身。市内のリュミエール博物館には、2人が発明した撮影機能付きの世界初の複合映写機「シネマトグラフ」が展示されている。実は同映写機の発明もリヨンが絹織物の街だったことと関係がある。「シネマトグラフ」はミシンの仕組みを応用したものだ。
日本企業も続々進出している
とくにバイオテクノロジーの領域では、有力都市という評価が世界に広がっている。フランスのサノフィパスツールやアメリカのベクトン・ディッキンソンといった大手だけでなく、スタートアップ企業も軒を連ねる。がん、感染症などさまざまな分野の研究を行う機関や病院も数多い。こうした分厚い集積に着目して日本の企業も複数進出した。
フランスのCTIバイオテック社の施設内に研究拠点を立ち上げたコーセーはその一例だ。コーセーの拠点始動は2017年10月。化粧品開発の基盤技術の研究を手掛けている。コーセーR&Dフランスの寺村崇氏いわく、リヨンは「皮膚科学研究のシリコンバレー」。「皮膚科学の研究で世界の最先端に位置している」という。「化粧品の大手原料メーカーも拠点を構えており、シナジーが期待できそうだ」(寺村氏)。
長瀬産業も2017年8月にドイツ現地法人の支店として開設。リヨンの皮膚科学の技術が優れている点を生かし、化粧品の新製品開発に力を入れる考えだ。「将来は研究開発だけでなく、フランスの化粧品市場へ参入するための拠点にもしたい」(リヨン支店ユニット・マネージャーの斎藤真人氏)。
一方、CTIバイオテックはコーセーや長瀬産業に加えて、資生堂、第一三共、アステラス製薬など多くの日本企業と医療分野を中心に共同研究を行っており、「売り上げ全体の35~40%が日本企業向け」(ニコ・フォラ最高経営責任者)。リヨンのバイオテクノロジーに対する日本企業の関心の高まりがうかがえる。
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